13/03/15

ひかりごけ

「ひかりごけ」稽古場日誌/「飛び掛る恐怖」

本番を間近に控えた俳優の顔が好きです。

精神的にも肉体的にも限界に近いだろうに、観客の前に立つ瞬間を見据えて、役以上の何かにとり憑かれいる。
おそらく、致命傷を負ってもオロナイン位で完治しそうな、不思議な生命力をまとっている。
「ひかりごけ」の俳優4人の顔にも、その緊張感が帯びています。
「いい感じだ。いい感じに追い詰っている・・・!」
とワクワクすると同時に、俳優として、羨ましさと悔しさを感じる程です。

さて、話は変わりますが、大阪に住んでいた頃、とあるチェーンの立ち呑み屋に行った際の話です。
壁に貼られたお品書きを見て品定めしている時に、ふと違和感。
串焼きのメニューが並んでいる。
「牛肉」
「豚肉」
「鶏肉」
「にく」
・・・なんの、にく?
厭な印象を受ける。
一緒に呑んでいた友人が、
「これなぁ、ミナミで酔って寝てるおっさんの肉やでー」と冗談。
それを笑って過ごしましたが、その瞬間から私の中では人の肉。
事実、それが安いお肉の形成肉であっても、一度人の肉かも? と思うと、絶対食べられない。
思考以上に自分の生理が強烈に拒否した事を思い出します。
私にとっての「同族を食べる」という事に対しての感覚ですが、皆様にも、およそよく似た感覚はありませんでしょうか?

しかし「ひかりごけ」という作品は、こんな生理を逆撫でするだけには留まらず、容赦なく様々な事を投げかけてきます。
稽古中にも、それらは俳優の身体を通し、更に力を増してこちらに飛び掛ってくる。

本日見学のシーンは第二幕。
船長は他の船員の肉を食べて生きながらえますが、船長の魂は、この先ずっと孤独で寒い洞窟の中なのではないか。
想像しきれない恐怖が飛び掛ってきました。
うう・・・困ります。
一人暮らしの孤独に影響するじゃないですか。

きっと客席にも、強靭な俳優達の身体を通った何かが飛び掛ってきます。
受け止め方は人それぞれです。
ぜひ、皆様なりに受け止めてみて下さい。


辻川ちかよ

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山の手事情社公演「ひかりごけ」
詳細は、こちらからどうぞ。
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13/03/14

ひかりごけ

「ひかりごけ」稽古場日誌/「男だからこそ」

ちょっくら稽古場にお邪魔してきた。

シーンの稽古が見られるかと思ったが、基礎稽古に一時間半もかかっている。
しかも、何をやっていたかというと、軽く発声練習の後、二人組みになって片方がもう片方の腕を掴み、グネグネ動かすだけのことである。
それを30分以上もグネグネやっている。しかも汗だくだ。
どうやら《四畳半》の身体の動かし方について検証しているらしい。

それ私にも教えてよ! と心の中で呟きながら見ていると、本当に些細な動きで
「あ、いまのはちょっと違った」
とか
「それじゃ左半分が硬直しちゃってるよ」
などと言っている。
なんて繊細で緻密なんだ!!

普段は若いもんがいて足を引っ張るから、その修正だけで時間がかかってしまうのだが、今回は先輩方だけの男4人芝居である。
安田氏の演出にも力が入るようだ。
気づけば一緒にやっている。
確かに、身体の動きの根源を探ろうというのだから生半可なことではない。
しかも今まで動いてきた仕組みとは違う論理で身体を動かそうとするのだから。
皆、40代の良いお年をした方々なのに、ちょっとした身体の情報をのがすまいと周りに集中するあまり、まるで少年ような顔つきになっている。
その様子に、不謹慎ではあるのだが、なんだかおかしくなってしまった。

「ひかりごけ」の戯曲も男しか出てこないが、男にしかわからない心情といったものがあるのではないか? と思う。
例えばもし、遭難したのが男でなく女だったら?
小さい子供のいる母親だったら食べるかもしれないが、多分死んだ仲間の親の顔等が浮かんできて、そこまでして自分が生きたいと思わないのではないだろうか?
男だからこそ、このような状態に陥ったというところが見たい。

私も、楽しみな公演である。

三井穂高

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山の手事情社公演「ひかりごけ」
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13/03/13

ひかりごけ

「ひかりごけ」稽古場日誌/「7号食」

3月3日のひな祭り、稽古が休みだったのだが、ふと、ダイエットするか。
と思い立つ。
BOOK OFFに行って、関連書籍をぱらぱら見ていると、ハイパーメディアクリエイター高城剛の書籍に目が止まる。
そして、これにするかと決めたのが。
「7号食」というやつである。
これは、玄米だけを10日間、食べ続けるというもので、他に食べていいのは、ごま塩だけ。
飲んでいいのは、水かお茶だけ。
ちなみに「8号食」は断食である。
断食までいくと、リアル「ひかりごけ」な気分が味わえるのだが、ここまでやると、稽古と日常生活に支障をきたしそうなので、やめておく。
その「7号食」だが、かれこれ5日目に突入した。
ごま塩の消費量が半端ない。
この稽古場日誌が掲載されるころには、挫折して肉を食ってしまったのか、それともやりおおせたのか判明している。

稽古では、演出・安田から叱咤という名の怒声を浴び、腹の虫が暴れ、飢えて、人の肉を食って、精神に失調をきたし、最後には自殺する役の内部に飛び込もうと、七転八倒していると、海の底に潜って、遠くから人の声が聞こえてくるような感覚になる。
これは、夢の世界か、それとも、三途の川を渡りかかっているのか。
視界に入る、浦さんや、川村さんもとんでもないことになっていたりするので、お互い様か。

間もなく本番です。お楽しみに。

斉木和洋

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山の手事情社公演「ひかりごけ」
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