13/03/21

ひかりごけ

「ひかりごけ」稽古場日誌/「未見」

劇場に入りました。
しかしまだ稽古を見ていません。
もちろん作業で忙しいというのもあります。
ここのところずっと7mとか6.5mとか3mの布を切ってはつなげてます。
しかし本当は、なるべくお客様と近い目線で見たいなあと思ったからです。

いつも「死ぬ気で」とかほざいてる私たちって外から見るとどうなのよ? と。
暑苦しいよ! と。

四畳半ってどうなのよ?
本当におもしろいの? おもしろいとしたら、どこなのよ? と。

…で、ありながらほぼ毎日稽古報告の長文メールが送られてきて、
(演出助手の小笠原やその子分・中川が書いています)
なんとなく稽古場の空気が読めちゃいます。ち。

出演者たちよ 悩め苦しめ痩せてみろ!

いやあ、出演してないってほんとにいいですね♪

出演してないから言ってしまいますが、私は食べて欲しい派です。

死んだら身内のものたちで私の皮をはぎ、葬式でみなさまにふるまいたいくらいです。

でもきっとみなさま不愉快になるでしょうから、せめてハゲタカとか、ハイエナなんかに食べて欲しいのですが…
そういった葬式はないものでしょうか。

さて「ひかりごけ」です。
以前、先輩の倉品さんが、元お嬢さん(シニア女優)を3人もたぶらかし、「ひかりごけ」をつくりました。
それは、今思えば奇蹟的な作品でした。
倉品先輩も書いていますが、出演もしていた倉品さんが、「存在感」というところで負けそうになっていたのも、私にとっては新鮮極まりない光景でした。

演技と技術の狭間を目の当たりにして、その不思議さに感じ入ったものでした。

作品は「ひかりごけ」のもつ不思議さにも迫っていたと思います。

しばしば私は「ひかりごけ」の上演を説教臭く感じてしまいますが、そこをシニア女優たちは回避できた。
それは図らずも、また失礼ながらも、倉品さんより死に近い女優さんたちの「切実さ」であったように思います。
それは狙って出せるものではない、ご本人に憑いたものです。
そこを獲得するのが、一番高度だと、最近私は考えています。

ずっと若い今回のキャストが、どうこの戯曲に迫ってくれるのか。
深い期待とともに、もっとも厳しい観客ですよ、今回のわたくし。
仕掛けを作りながら、まさか演技が仕掛けに負けるってことはないだろうね? と、意地悪な視線を送っていますよ。

ぜひ、いい意味で裏切ってほしいです。

大久保美智子

********************
山の手事情社公演「ひかりごけ」
詳細は、こちらからどうぞ。
********************

13/03/20

ひかりごけ

「ひかりごけ」稽古場日誌/「観劇にかこつけて文学散歩」

いよいよ稽古も大詰めを迎え、連日通し稽古が行われています。
現在も通し中です。

私はといえば、舞台セットに使用する布と格闘中です。
一階のスタジオから時折、ものすごい叫び声が響きます。
あぁ、観たい観たい!
しかし、そうも言ってられません。
劇場入り直前ともなると舞台美術から衣裳から制作まで各部署まんべんなく、大わらわになっております。
ジャージがペンキだらけの演出助手くみこさん、目の下のクマが濃くなっている演出助手の助手、佐織。

ニコニコしながら「何からはじめていいやら? やることがいっぱい・・・」
とつぶやく衣裳の綾さん。
出演者の面々もかなり追い詰められた表情で稽古場を漂っていることが多く、日に日に痩せて顔色が悪くなってます。
話しかけにくいったらないです。
稽古場がどんどんマッカウス洞窟に飲み込まれていく・・・

そこで、くらーい稽古場を抜け出し、「ひかりごけ」文学散歩のご案内です。
”ひかりごけ”はその名の通り苔です。
北海道やロシアなど冷涼な土地に生えている大変希少な苔だそうです。
東京都内では、江戸城跡の北の丸公園で見ることができます。
江戸城築城の時、全国から運ばれてきた石に付着していたらしいですよ。
東京で見ることができるのは、極めて稀です!
もう一つ、「ひかりごけ」の作者、武田泰淳の奥様も作家なのをご存知でしょうか。
武田百合子さんと言い、代表作の『富士日記』は泰淳の死後、二人で過ごした日々を綴った日記を清書した名作です。
この二人が出会ったのが、神保町にある喫茶店「ランボオ」(現ミロンガ)です。
すずらん通りの裏にあります。
ここで百合子が働いていたときに泰淳は常連客だったのだそうです。
ロマンチックでございます。

あら、北の丸公園もミロンガも今回の劇場である文化学院のすぐ近くじゃありませんか!?
観劇ついでに文学散歩でもいかが。
でも、一番のおすすめの観劇方法は、よおくお腹をへらして観に来ることでしょうか。

安部みはる


********************
山の手事情社公演「ひかりごけ」
詳細は、こちらからどうぞ。
********************

13/03/19

ひかりごけ

「ひかりごけ」稽古場日誌/「本番直前」

初日一週間を切った。
毎回公演のたびにもう少し時間があればと思いながら本番に突入してしまう。
今回も焦る気持ちでいっぱいだ。

だが芝居はまだまだ変わる。

個人的には芝居に対していろいろな気づきがある時期がだいたい三回ある。
ああそうか、こうすればいいんだ! というのが。

ひとつは本番一週間前。
芝居の骨組が固まり、全体像や流れが見えたとき。
芝居の中での自分の立ち位置を確認するとき。

二つ目は劇場入りして、実際の装置や照明などを目の当たりにして舞台空間に浸ったとき。

最後はホントの本番中。
お客さんがいる中で急に面白いことを思いつくことがある。
緊張して頭がおかしくなっているのに、「あっ、こういうの有りかも」とちょっとしたアイデアが浮かんだりする。
そしてそれは意外に間違ってなかったりする。

要はまだまだチャンスはあるのだ。
耳を傾けていればいいのだ。
ただ、そういうチャンスをうまく拾えたとき、
場合によっては今まで作ってきたものを、あっさり捨て去ることが出来るかどうか・・。
それがなかなか難しい。

山本芳郎

********************
山の手事情社公演「ひかりごけ」
詳細は、こちらからどうぞ。
********************

Top «« 1 2 3 4 5 6 7 8 .. »» Last