13/04/29

道成寺/モルドヴァ・ルーマニア

"Enemy is strong"/Kazuhiro Saiki

Yamanote Jijosha will take part in Sibiu International Theatre Festival this year,too.
We are to present "Dojoji" based on Japanese folklore, in Cisuadioara fortified church at the top of the mountain, where it was build as a fortress to defend from the invasion of enemies.
However, we regret to say about it, "No water & no toilet, but only a little electric power."
Furthermore, we will have to wait to start our performance untill the sunset, because we need the full darkness to make complete performance.
In additionally, we have the most difficult problem, which is the short of time to prepare it including the rehearsal. Because we must to wait to start it untill the curtain drop of previous company, we will be able to start the rehearsal on the midnight. And after short sleeping, the D day would start.
The sunset is around 21:00 and "Dojoji" will start at 21:00
I cannot help being excited.
Enemy is strong.
But it's a piece of cake!
I believe the God of the drama should smile at us finally.

Kazuhiro Saiki

山の手事情社は今年もシビウ国際演劇祭に参加します。
日本の昔からある物語を基にした『道成寺』を上演します。
上演をする場所は、山の上にあるチズナディオラ要塞教会。
昔、侵略してくる敵を防御するために建てられたものです。
そこには、水もなく、少しの電気があって、トイレもない。
そして、上演を始めるのに日が沈むのを待たなくてはいけない。
なぜなら、日没を待たないと、劇場が暗闇にならないから。
しかし、最も無いのは時間だ。
前のカンパニーが幕を下ろしたら、準備を始める。
リハーサルを行うのは真夜中になる。
そして、夜があけ、ほんのすこしの睡眠をとった後、運命の日が始まる。
日没は21時。
『道成寺』の開演は21時。
わくわくせずにはいられない。
敵は手強い。
しかし、朝飯前さ。
最後には演劇の神様が微笑みかけてくれるに違いない。

斉木和洋

13/04/28

道成寺/モルドヴァ・ルーマニア

コードネームはM

ある日、私はMに呼ばれ、
「『マクベス』をやらない?」と誘われた。
初めは稽古の一環で、いつか本番をやりたい、
そんな感じだった。
以前から先輩であるMの稽古スタイルや台本への取り組み方が
気になっていたので願ってもない誘いだった。
それがいつの間にか話が進み、近々内部発表を
することになるとは。
いつか、って、こんなにすぐの話だったのか・・・
恐るべし、M!

という訳で、Mは強い。
小さい体で物腰も柔らかいのだが、
いろいろなものを
バッサバッサと切り捨てていく。
女の仮面をかぶった武士のようだ。
一度稽古で集中出来なくて怒られた時は、本当に
恐ろしいと思った。ひとつも大声を立てたわけでもない。
ただ静かに、私の甘えた根性を指摘しただけだ。
東京で演劇をやっていくことの難しさと、
それを選んだ責任は自分にあることを改めて確認した。

さらに話は続く。
Mの進める稽古はとにかく休む間がない。
頭で考えるより、動いて身体で考えろといった具合で、
次から次へとメニューをこなしていく。
初めのころはニーナじゃないけれど、
「一息つきたいわ、一息!」
と思ってしまっていたのだが、だんだん慣れてきた。
Mは昔卓球部だったという。
そうか、これは卓球の球の速さだ!
人生で一度も運動部に所属したことのない者にとっては
ありがたい経験である。
この機会に、少しでも反射神経を・・・そう簡単にはいかないか。

三井穂高

13/04/25

道成寺/モルドヴァ・ルーマニア

新劇団員です!

山の手事情社は、集団創作の戦場です。
想像を絶する産みの苦しみ。
革新的で、おもしろく人の心を動かすような
素晴らしいアイディアがほいほい浮かんでくるわきゃないのです。
時間をかけて悩んだり、
みんなで話し合ったりすれば出来上がるというものでもない。
とはいえ、悩むのも話し合うのも、必要不可欠です。
時間を無駄にしてはいけないし、時間を惜しんでもいけません。
この時間感覚をつかむのが、
実は非常に難しいと私は最近痛感しております。

ここ3週間ほど、3、4人のグループに分かれて《ルパム》作りに勤しんでいました。
(《ルパム》については山の手事情社HPにも説明がありますが、簡単に言えば、芝居に挿入される演劇的なダンスです。)
テーマに沿って話し合い、振りを作り、曲を選び、構成を考え、みんなの前で発表します。

この4月に山の手事情社に入団した私にとっては、
劇団員との初めての共同作業。
面白いもの作ってやるぞと意気揚々と乗り出しました。
この度の《ルパム》のテーマは、「喜劇」と「5プードの恋」。
(プードとはロシアの重さの単位、5プード=約80kg)
じっくりと、雑談のような話し合いから始まった稽古。
「日常でどんなところに喜劇を感じる?」
「最近どんな恋愛をしてるの?」
「そういえばあの映画がおもしろい恋愛を扱っていて・・・」
たいした面白い経験がない後ろめたさもさることながら、
こんなゆっくりお話ばかりしていて発表までに間に合うのか!?
はやく身体を動かそうではないか…!
という焦燥感がむくむくと育っていきます。
しかし、あとからウソみたいにその雑談が生きてきました。
動きを創るのに行きづまったら、
自分たちの恋愛に対する感じ方、
考え方に立ち返ってみる。
すると驚くほど別の角度から動きのアイディアが出てきたりする。
どうすればアイディアが出やすいかという時間の使い方を、
山の手事情社の役者たちは集団創作の経験から、
なんとなく感覚的につかんでいるようなのです。

山の手事情社に入団する前は、
こういった集団でのシーンは演出家が提案するものと認識していました。
役者は、それに対してなにかアイディアがあれば言えばよく、
なんとしてでもひねり出そうとする必要はなかった。
しかし、山の手ではすべてをまず役者が考えます。
それはめちゃくちゃ苦しいことであると同時に、
爆発的な面白さを秘めています。
役者自身が、普段からどんなことを考えて生き、
戯曲を読んで何を感じ、現代に生きる自分とどう重ねているのか、
それをどのような手段で客に伝えていくのか、
一人ひとりがクリエイターとして悩み苦しんで産み出してこそ、
エネルギッシュなものが立ちあがってくるのです。
自分は何をしたいのか、何をすべきなのか、
常に問い続けなければならない戦いの場であります。
わたしもその恐ろしい戦場に足を踏み入れてしまいました。
山の手クリエイターの一員として精進してまいりますので、
今後ともなにとぞよろしくお願いいたします。

名越未央