13/07/10

道成寺/モルドヴァ・ルーマニア

歴代第一位

このたびのモルドバ、ルーマニアツアー無事終えることができ、また最高の賞をいただくことが出来ましたこと
改めてご報告させていただくとともに、日頃ご愛顧いただいております、皆様には心から感謝しております。
ありがとうございました。今後、山の手事情社は更なる発展を目指し精進してまいりますので、変わらずご声援いただければと思います。

さてさて、今ツアーですが、私にとっては俳優人生のなかで一番きついツアーだったのではないかと思うのです!
過去にはいろいろありました。

海外の空港で迎えのバスが3時間くらい来なく不安になったことや、
渡航前日に骨折をし、吐き気をこらえながら本番をこなしたことや、
仕込み当日に用意してもらえるはずの舞台美術がまったくなかったことや…

あげたらたくさんありますが、 今回はそれをも上回るものでした。
天井まで10メートルあるところに200キロ以上あろう梁を人力で上げる。

セットを吊る為に必要なんですが、本来それはフェスティバルの運営でやるものだと思うのですが…
当日になって「この教会は重要文化財だから常設の梁には吊るな」って言われてもなんですが…
なので舞台監督さん、劇団員男子でロープで引き上げたんですが…

途中でロープが切れて、200キロの梁が落ちてきたんです。
かろうじて壁に立てかかり怪我はなかったんですが、天井に上っていた私は
ロープが切れた衝撃で下に引っ張り込まれた んです。

そのときに細ロープを一応の命綱として自分の体と柱に巻きつけていたんです。
それがなかったらと思うと…恐怖でたまりません。

それから徹夜で仕込み、ほとんど寝ることなくそのまま本番。
恐怖と疲れが取れないままツアーをこなすというかなりハードでした。

でも各都市で高評価をもらったことでそのときは疲れなんか吹っ飛んだのですが、
帰国してからどっと疲れが出たのか、人生初めての時差ぼけに1週間悩まされました。

恐怖はあるのですが、正直そこで斃れたとしても本望だと思っ ています。(笑)
自分のやりたいことですから。

こう笑って話せるのも実はもう次の刺激を求めているからなのかもしれません。
やってやる! やってやるよ! どこまででもやってやる!

浦弘毅
※写真
上/安田が頂いた「特別功労賞」
下/シビウの本番「清姫」

13/07/10

道成寺/モルドヴァ・ルーマニア

世界レベル

幸運にも今までを含め4回の渡航に参加させていただいた。
まず何より、関わってくださった方に感謝している。
沢山の方の協力無しでは今回の公演も成し遂げられなかったと思う。
本当にありがとうございました。

これから劇団員の日誌の中で、今までのツアーで1番大変だったという報告がチラホラ出てくると思う。自分の中では随分旅慣れをしたなと実感したツアーであったが、それ以上に過酷な状況でもあった。その場その場で必死でした。
その反面、何にも変え難い喜びも感じていたことも事実です。

さて、今回の渡航で1番強く感じた事。
「世界のレベルはまだまだ高い」という事。
沢山拍手も頂き、暖かいお客様にも恵まれ、新しい出会いもあり、過酷な環境の中でも怪我も無くやり遂げ、喜んで貰えた感じはあるものの… 何か納得がいかない。
(個人的な反省はもっと細かくあるけれど… )

何かが大きく足りない、もしくはおっついていない。
今回肌で感じた無言の評価。
「世界のレベルはこんなものじゃないぞ! 」

知的レベルとでも言おうか、全体的に子供っぽいと言おうか。
(「日本人」とひとくくりにするのはよくないが… )
それが個性でもあるのかもしれないが、世界だと役に立たないと感じる。

さっきから「世界とかレベル」って何だよ!
と思われてる方もいると思うが、
決して偉そうな事を言いたい訳でも、堅苦しくなりたい訳でもない。
世界にだってそうで無いものは沢山ある。

ただ、第6感で感じた恐怖。

挑戦し続けているからわかる事。
自分が今後のどのように成長すべきか本当に頭を抱えたくなる。

ツアーを繰り返す事で積み重なる経験は何にも変え難い。
少しでも成長した山の手事情社を、
役者を魅せれるよう、これからも挑戦が続きます。

植田 麻里絵
※写真
上/チズナティオラ要塞教会の麓(入り口)
下/シビウの本番「日高川入相花王」

13/07/08

道成寺/モルドヴァ・ルーマニア

シビウでの事

今回が初参加だった海外ツアー。
最も大変な日が続いたシビウの事を主に書きます。

シビウ国際演劇祭というだけあってシビウの町は当初予想していたよりも大変な賑いだった。昼頃には通りが埋め尽くされるほどの人の数に、こんなにたくさんの人が演劇を観に集まっている光景は日本ではちょっと見られないと思った。
日本にも演劇祭はあるが、町全体から、楽しい事しか起こらないぞという様な雰囲気からもう全然違う。人々の中での演劇の価値がそれだけ高いものなのだろう。
見慣れない町並みも、絶えずどこかしらで行われている大道芸も一緒になって一つの舞台、作り物、絵のようだった。
ただし劇場がどこもそれぞれそれなりに離れた場所にあるので、あっちもこっちもまわれないのが難点。

期待していた「かもめ」だったが、結論から言えばいまいちだった。
台詞は、大体このシーンだろうと当たりをつける事はできたが、ドイツ語でやたら力強いという他は、上手いのか下手なのかすらさっぱりわからず。
車やら鞄やら帽子や服が雑多に中央の演技エリアを取り囲むように配置されていたセットには最初期待したが、それほど効果的に使われることもなく、むしろなぜそう使うんだという不必要な疑問を残された。
役者が全員若い人達だったので、少し関係性が見えづらくなってしまう部分があった。
感情だけは結構ありありと伝わってきたように思う。
基本オーバーリアクションだったからだろうか。
全部が自分たちに置き換えたときどうすればいいのかという問題に跳ね返ってくるので、今回ここで観られてよかったと思った。

一度観ておきたかった「ファウスト」は期待以上だった。
様々な仕掛けが次々と登場するので見ているだけで飽きないし、メフィストフェレス役の女優がもはや異常の域に片足を突っ込んだような演技で、本当に人間ではないものに見えた。
いつかまた必ず観たいと思った。

チズナディオラ要塞教会の公演は過酷だった。主に仕込みが。
まずなんといってもシビウから車に乗ること20分程離れた山の上、さらに麓から5分程山登りをしたところにそれはあるのである。
資材や機材は重かろうと何であろうと手運び。トイレは麓のみにあり、午後6時過ぎから必ず気温の変化によって雨が降る。そしてそれ以降の時間、石造りの教会内は非常に寒くなる。加えて山道に灯りはない。
諸々の事情により新たな梁を男性陣で9メートル上の天井に設置することになるが、肝心の木材がなかなか来ない。やっと到着するも非常に重い木材を数人がかりで担いで山登り。さらにいざ設置の段になってから詳しくは伏せるが一歩間違えば大事故になっていたような事態も起きた。本当に死ぬかと思った。死ぬかと思ったのだ。
仕込みは徹夜で行われた。午前五時過ぎに見た朝日と朝霧に沈んだ麓の光景は一生忘れないだろう。
しかし問題は続く。ある外的要因により教会内が停電。音響照明の仕込みが頓挫。呪いにでもかかったのだろうか。
それでも何とか無事公演まで漕ぎ着ける。

自分が出来ること、出来ないこと、出来た方が良い事、出来るべきであること、まだまだ力不足であることを思い知らされた。視野を広く二手三手先を読んで行動する事も頑張っているつもりだがまだまだできてはいない。今回のツアーは自分の総合テストの様でもあり、貴重な経験が出来た修行の様でもあった。
次回のツアーがあれば是非また参加したい。ただし今度はスタッフとしてではなく、役者として。これからますます頑張っていこうと思う。

鯉渕 翼
※写真
上/シビウの街にて、道成寺のポスターと
下/チズナティオラ要塞教会の天井

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