14/06/22

にごりえ

『佐々木啓という俳優』(俳優紹介)

俳優の種類を、舞台上だけでよく見える人と、舞台上以外でも素敵な人にわけるとしたら、彼は前者に属すると思われる。まあ、日常の奴の冴えないったらない。スタイルもよくないし、背も高くない、若いのに爽やかさというものがかけらもない。絶望的な服のセンスをしていて、紫の長袖シャツに眩しいほどの黄色のTシャツを重ね、頭に白いヘアバンドをして満足気にしている。はっきり言うと変な人である。しかも、そのことを自分で知っていて、開き直り、それを売りにしている感さえある。

しかし、不思議なことに舞台に上がると、あれ?少し魅力的に見えるではないか? なんだか素敵で、次に出てくるのが楽しみになる。(まあ、毎回ではないけれどね。) なんでだろう? 彼は人前で自分を表現することの比類なき喜びを知り始めているのだろうと思う。そして、その怖さも。だから、稽古の時の彼はとても真摯で、いつも瀬戸際に立っている。逆にそれがないと、いつもの変な佐々木をお金を出して舞台上で見なくちゃならなくなる。佐々木よ。おごるな。舞台に立つ喜びとそのための苦しみは正比例するのだよ。

さてさて、『にごりえ』 という舞台でどんな彼を見ることができますやら。私もとても楽しみであります。平素はお世辞にもハンサムとは言えませんが、舞台上でどう変わってくれますやら、みなさまもどうか見に来てやってくださいませ。

倉品淳子

14/06/21

にごりえ

『毒まむし河合達也』(演出部紹介)

久方振りに演出部にニューカマーがやってきた。
山の手の演出助手というと、過去には、双数姉妹の小池さんや、ort-d.dの倉迫さんがいた。
少し前といってもずいぶん前には三谷直子さんがいた。
小池さんや倉迫さんがいた時代はもう、ずいぶん、ずいぶん前なのである。
小笠原くみこの一党独裁体制が続いた演出助手のポジションにようやく吹いてきた新しい風。
果たして演出家デビューを果たせるのか、河合達也。
特技はヒーリングストレッチに殺陣。
花みこしと流しにわかで有名な岐阜県美濃市出身。
って河合に聞いたが・・・。
ヒーリングストレッチって何???
花みこしと流しにわかって有名なの???
知りません。
岐阜県美濃市といえば、「美濃のまむし」の異名をとった斎藤道三でしょう。
おお。
まむしといえば蛇。
この河合達也という男は、研修生修了公演『つぶやきとざんげ』で「蛇」役を演じてた。
これは偶然であるまい。
一度喰らいついたら離さない。粘り強い男なのだ。
道三よろしく、うえのものを毒殺し、成り上がって一国の主となるに違いない。
おお。
ヒーリングストレッチだ。
癒しつつ、毒殺する演出家である。
こちらが下手に出ていると、先輩に向かってダメ出しを始める太いところも持っていると聞く。
まだ、その場面には遭遇していないが、そんなことになったら飛び蹴りを食らわしているかもしれない。
癒して殺すか、殺されるか。
きっと、『にごりえ』もげに恐ろしき現場になっているのであろう。
果たして誰が毒殺されるのか。
『にごりえ』の本番が今からとても楽しみである。

斉木和洋

14/06/20

にごりえ

『1日の始まり』

本番も約1ヶ月前になり、6月から毎日稽古です。そんな山の手事情社若手の1日の始まりを少し紹介します。

準備運動もそこそこに昼の稽古場から飛び出し、走れ走れと安田に追いたてられながら本門寺の決して走るようには設計されていない石段をカンフー映画顔負けの一段飛ばしで駆け上がり息も絶え絶え苦悶の表情で駆け降りる。日蓮様もビックリ。

リアル「何事によりて走り来たれるぞ」※である。
※『道成寺』の台詞より

稽古場に戻れば息つく間もなく拷問のような柔軟。体がネジ切れそうになる。なにも白状することはないのになにか白状しなくてはいけないのではないかという強迫観念に襲われる。

さらに今日1日の力を根こそぎ持っていこうとする筋トレへと続く。そこには一切の男女差別がない。そして休憩することなく発声。酸素濃度が薄く感じる稽古場で自分が今いったい何をいっているのかわからなくなる。足元がふらつきだす人まで出ることもある。

そこまでこなしてからやっとシーン稽古やエチュードに入っていく。まあここからが本当の地獄なのだが。そんな環境で過ごした人間がどんな芝居を見せるのか。

是非劇場に確かめに来てください。

鯉渕翼

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