14/05/29

にごりえ

『言文一致』

樋口一葉の活躍した明治初期。
この時代、平安時代に確立し、それまでほとんど変わらず使われてきた文語(書き言葉)と1000年の間に大きく移り変わった口語(話し言葉)のギャップをうめて、文章を書き記すときにこれらを一致させて意思疎通にも学問習得にも便利なようにしようという動き、「言文一致運動」が行われた。

これには学者だけでなく二葉亭四迷を始めとする小説家の実作を伴う実験が大きく貢献したのだが、話し言葉をそのまま文書におこすと言葉のリズムが失われ、情緒が乏しくなり、田舎っぽいとけなされることもあった。
そのため言文一致はすぐには広まらず、それまでの文語体で作品を出し続ける者も少なくなかった。

ここで樋口一葉の作品に目を向けてみる。
会話文は現在の口語に近いものの、句点が少なく、鉤括弧もない。
現代文に慣れた私たちにはひどく読解しづらい。

しかし何度も読み進めてみるとこの独特のリズムの良さに引き込まれていく自分に気がつく。
小説なのにどこか詩的で流暢、さすがは歌塾でもその才能を認められていた一葉である。

演劇の舞台で表現したとき、この文体がどう生きてくるのかはまだわからない。
しかし“明治から現代まで変わらず存在し続けるだろう男女のすれ違いの機微” と“取っ付きにくくもどこか離れ難いこの不思議な魅力のある文体” が科学反応をおこし、現代人に突き刺さる。
そんな予感は生まれ始めている。

田中信介
※写真:樋口一葉のゆかりの地を巡るツアーより
菊坂近くの公園にて休憩中

14/05/22

にごりえ

『山の手事情社の文化と、河合達也の文化と』

初めまして。

本年度より劇団山の手事情社の演出部として活動をしてまいります、河合達也(かわいたつや)です。

昨年度まで研修生としての山の手事情社の稽古を受けて参りましたが、今年度より演出部という立場で参加しております。
私は「ものづくり」 という作業が好きで、積み木で何かを作ったり、何も無い平地の上に家が造られていく過程なんかにとても興奮を覚えます。
演出するという事は空っぽの舞台の上に作品を土台にして俳優やスタッフの方達の想いを詰め込んでいくことと考えています。これから演出部として「ものづくり」 に関わっていける事がとても楽しみです。


山の手事情社では役者主体で演劇を作っていくという特徴があります。
30年続いている劇団ですから、根付いている「文化」 は多種多様です。
国内外で高く評価を受けている山の手事情社を肌で感じ、自分の中に取り込み、技術を学んでいこうと思います。
それと同時に、この劇団の持っていない「文化」 を自分の中から見つけ出し確かな存在となるように育てていきたいと思います。

まずは7月に行われます若手公演『にごりえ』。
公演に向けて、作品が面白くなるよう稽古に励んで参ります。
どうぞよろしくお願いします。

※写真:研修生修了公演「つぶやきとざんげ」より

河合達也

14/05/21

にごりえ

『おそらく、多分、運命』

皆様、初めましての方は初めまして。
そうでない方も初めまして。
今年度より劇団員となりました、高橋真理(たかはししんり)と申します。
研修生の頃の稽古場レポートを見てくださった方や修了公演を観に来てくださった方からしたら
「こいつが劇団員になったか!! 」とお思いかと存じます。

安心してください、僕も全く同じ気持ちでございます。
何故劇団員になったか、なれたかは僕自身もまだ分かっておりませんが、これもきっと、おそらく、多分、運命だと思いますので、精一杯頑張ろうと思います。

劇団員になった以上は劇団を今以上に盛り上げていく次第でございますので、よろしくお願いいたします。
公演のチラシに僕の名前がありましたら、「お、やってるんだな。」
みたいな感じで暖かく見守っていただけると幸いでございます。

これからどうぞよろしくお願いいたします。

高橋真理
※写真:研修生修了公演「つぶやきとざんげ」より