14/03/07
『ヘッダの屋敷』
今『ヘッダ・ガブラー』 が作られている山の手事情社の事務所は、一見稽古場まで備わっているような建物には見えない。さらに内部は厳重な遮音工事のため、とくに階段は分厚い壁と巨大な扉に仕切られ薄暗く、稽古場は稽古中外の光が一切入らないなんて事はもっとわからない。見た目じゃ中身はわからない。何となく人というのもそんな感じだなと思った。
ヘッダという女は美しい見た目とは裏腹に、何を考えているのかわからない。不満なこともそうでないことも全て察しろ感じろと相手に向かってはっきり言わない。遂にはその無言の不満が人を破滅させ、自分も破滅させる。
外見は綺麗でも中身はドロドロ。いくら美人だったとしても夫婦として一緒に暮らしていくなんて私だったらとても耐えられない。こんな女に引かれるテスマンもレーヴェボルクもおかしいのではないか。しかし、そうは思うものの、危ない何かを内包した女性にどこか引かれてしまう気持ちもわからなくもない。自分が有利で安全な立場が確保されているならものにしてしまおうとするブラック判事の様なところは自分にもある。自分が絶対安全なら持ち物は珍しければ珍しいほど良いものだから。
外見はとても綺麗だが、外からではその複雑な内部が見えず、一度立ち入ろうとすればたちまち想像だにしない罠や仕掛けが待ち受ける。しかし土地が大変な価値を持っている。ヘッダという女を建物にしたらきっとそんな風になるだろう。
山の手事情社が建築する『ヘッダ・ガブラー』 を是非見に来てください。
鯉渕翼