14/06/15

にごりえ

『スコール並の汗』

先日、天気予報を聞いていたにもかかわらず、スコールに遭遇。頭から足先までびっしょりになり、危うく風邪をひくところでした。

さて本番に向けて徐々に稽古漬け。身体訓練の汗、発声の汗、冷汗、心の汗、目から鼻からの汗、色んな汗が稽古場に滴り落ちています。スコール並にびっしょびっしょです。

さて、作品の『にごりえ』ですが、辞書で調べると、「濁り江」と漢字で出てきます。意味は“水の濁った入り江や川” 今の稽古場のようです。

物語は娼婦お力にスポットを当てた群像劇ですが、それぞれの人物は何か立ち行かないことを抱えています。どうしていいかわからず留まっている者。もしくは意図してない流れに巻き込まれていく者。自ら破滅の道を選んでいく者。こちらも濁った入り江のようにすっきりしません。

自分達の人生にも重なるこの先どうなるかわからない雲行きの怪しさがあります。明治も今も変わらない心の中の衝動。自分の伝えたい事は何なのだろう、やりたいことは何なのだろう、と自問自答する若手メンバーの姿と重なります。

「思い切ってやれやれ! 」という
登場人物の1人、結城朝之助の言葉が心に突き刺さります。

後はないので思い切ってやるのみ。

日本の夏と共に、若手メンバーで織り成す『にごりえ』を劇場に体験しにきてください!

にごりながら(笑)、お待ちしております。

植田麻里絵

14/06/14

にごりえ

『谷 洋介という男』(俳優紹介)

寡黙な男である。
どれだけ寡黙かというと24時間一緒にいて一言も発しない位だ。
プライベートな話など聞いたことも無いし、挨拶でさえ怪しい。

動きが遅い。
体重は軽いのに動き出しが滅茶苦茶遅い。
彼の周りだけ無重力の世界に見える。
パンの袋を開けるのに費やす時間は無限大。

表情が無い。
整った顔立ちなのだが、視線は前を向いたまま動かない。
口は常に閉じたまま。
生まれた時もこんな表情だったのだろうというポーカーフェイス。

そんな彼が舞台上では光り輝く。
良く喋り、良く動く。
堰を切ったように暴れ回り、リアクションもしてくれる。
顔芸を用いギャグもかましてくれる。

近々作品の重要なポジションを担うのでは、と予感させてくれる。

若手男子トップの男(入団順が)

谷洋介である。

川村岳

14/06/13

にごりえ豆知識

「にごりえ」豆知識2/樋口一葉と『にごりえ』

樋口一葉(1872- 1896)は、東京生まれ。本名は夏子、戸籍名は奈津。

一葉は24歳の若さでこの世を去りましたが、小説家として活動したのは20歳?24歳の四年間。彼女の残した作品は、小説、単行本、随筆、日記、和歌と様々ある。

中でも、彼女を『閨秀作家』(学問、芸術に秀れた女性。才能豊かな婦人)として世に知らしめた作品が、小説『にごりえ』である。

この作品は、彼女の自伝小説とも言われており、その『にごりえ』を発表した翌年に彼女は亡くなる。

ちょうど脂の乗って来た矢先の死である。不思議な事に、樋口一葉の家系は、父、長兄と「家督」を継いだ人間は転機を迎えた翌年に病でこの世を去っている。『にごりえ』の作品中に、主人公のお力が「私等が家のやうに生まれついたは何にもなる事は出来ないので御座んせう」と言っているのだが、樋口一葉にとっても身につまされる言葉であったと思われる。さて、そんな彼女の初期の作品は、主に「美少女、お嬢様の恋」というヒロイン物だったが、後期になると「身分の低い女性の悲恋や既婚者の不道徳な恋愛、悲恋」に視点を向けて行った事も面白い。ちなみに、一葉は一生涯独身だった。

樋口一葉の研究者の間では「処女説v.s.非処女説」で物議を醸すのはお約束なのだが、劇団山の手事情社でもその事については「諸説みだれて取り止めたる事なけれど」(『にごりえ』より)、樋口一葉への熱い思いがそうさせているのでしょう。

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