14/03/11
『揺らめいて、現れて』
稽古場が池上に移り早4ヶ月、快適な稽古環境を作るべく忙しいスケジュールの合間を縫って改装工事を何度かに分けて重ねている。
2月の頭には二階のスタジオの床に黒のフローリングシートを新たに敷く作業があった。
ところでこのフローリング、まだピカピカで微妙に鏡のように反射している。今までパンチの敷かれた床で稽古することが多かったため、この光景がなんだかちょっと新鮮。
ただでさえ私共の劇団が用いるところのスタイルである《四畳半》 のクネクネとした非日常的な動きが床に淡く揺らめいて写っている様はなんだかそれだけで一種の美術のようで面白い。
しかしこの《四畳半》 、本番で皆様にお見せする形に仕上がるまで本当に長く緻密な稽古を重ねている。ほんの少しの胸の角度、足の位置の違いなんかで見える表現が変わってしまうのだ。99% 出来ていてもそれは惜しいだけで結果としては見せたいものが見えなくなり1% しか出来ていないことと同義になってしまう。
先日自主稽古を見学していたときもエイレルト・レェーブボルク役の浦さんがあるシーンの稽古中、「見せるべきものが違う気がする、全部考え直します! 」と仰っていた。ベテランの役者が本番まで2週間を切っていてもとことんアグレッシブにシーンを作り込んで行く。驚きつつも改めてうちの役者がもつ舞台にかけるエネルギーの大きさを感じた。
そうした稽古を重ね、フローリングに移る揺らめきのように朧げなこの世に無い別の世界。それが役者の身体を通して舞台上に確かに現れる奇跡とも言える瞬間をぜひとも劇場でお見逃しなく!
田中信介