14/02/26
『密かに、しめやかに、しずしずと舞う』
ここ数日、1階の稽古場につめている。
3階建ての稽古場がフル回転だ。
1階では、研修生の阿鼻叫喚と演出・倉品淳子によるダンス演出。
稽古場の前面に仁王立ち。
身振り手振りで指示を出しているというか、踊っている。
演出席に戻ったと思いきや、おとなしく見ていられないのか、指揮者のように踊りだす。
そして、時折、2階から研修生の自主稽古の阿鼻叫喚が漏れ聞こえる。
3階では、『ヘッダ・ガブラー』の稽古が行われているが、1階からは物音ひとつ聞こえず。その様子は伺いしれない。
とはいえ、Youtubeの動画の撮影を仰せつかり、俳優の生の声をひとつひとつ拾っていくと、どうも普通の『ヘッダ・ガブラー』ではないようだ。
年若く、美貌で、プライドが高く、孤独で、男たちをいいようにあしらい、人生に飽き飽きしている女性。
というのが通説だが、臆病で傷つきやすい女性として描きたいということだ。
イプセンと言えば、100年以上も前の作家だが、当時は上演禁止の作品を連発した危険な男である。
そして、『ヘッダ・ガブラー』は60を越えてますますお盛んなおっさんイプセンが、微に入り細をうがち、じわじわと女性の主人公を痛めつける変態戯曲である。
きっと階上では、密やかに、しめやかに主人公ヘッダがじわじわと痛められているに違いない。
そして、もしかしたら、3階におわす演出・安田もしずしずと舞っているのかもしれないと思うと、今からとても楽しみである。
斉木和洋