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小笠原くみこ浦 弘毅演出ノート

Anniversary/2017.3

山の手事情社は研修プログラムを1996年に開始し、今年で20周年を迎えます。
この20年間で数多くの俳優が巣立っていきました。あこがれて入ってきたはずの演劇の世界。
しかし日々の稽古ではそれとはまったく違う、苦しみ、悩み、疲弊、逃亡の毎日。
かつての私もそうでした。

ですが、それが人生の礎となり、世間に飛びだす勇気となることも私自身実感しました。

成長とは苦しみ、悩み、後悔の中から生まれてくる。
それを節目節目で思い出し、また胸が締め付けられる思いをしながらまた前へすすむ。
これが本来の記念日の在り方なのだと強く思うことがあります。

今回の公演「Anniversary」は決して華やかなものではなく、また一時の憂さ晴らしのイベントではありません。
むしろ今までの自分の人生がいったん破綻する物語です。

それを経て登場人物がどのように前に進むのか、進まないのか。
彼らはまた再会することはあるのか。ご覧いただきながら想像していただければ幸いです。

本日は誠にありがとうございました。

構成・演出 浦 弘毅

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演劇の世界に関わっていると明かすと「好きなこと、やりたいことができていいね」と、よく言われます。それは大間違いで、演劇の現場は99%がやりたくない、面倒くさい、ことだらけです。

その誤解を解きたいという思いは、「やりたいこと、好きなことができて、いいでしょう」と胸を張って言えるように踏ん張るんだ、という気持ちに変わり、自分に言い聞かせることでエネルギーになっている。そう気付いたのは、演劇の世界に携わって5年目くらいだったでしょうか。

しかし、崩れそうになることが何度も訪れる中、誤解を解いたり、自分のためだけでは立ち行かないと気づいたのが、10年目くらいだったと思います。

そして20年が経過した今、演劇は、舞台という場所にあるのではなく、「舞台と客席の間にあるもの」で、そこに1%のやりたいことを見出し、そこに向けて踏ん張るのだと思っています。

この作品の出演者は、駆け出したばかりの俳優たちです。私が20年かけて気付いたことを、半ば押し付けるように創作してきましたが、この公演の「舞台と客席の間にあるもの」は、今しか感じることができないことです。本当の踏ん張りを見せたとき、「Anniversary」になると思っています。

本日は、ご来場いただき誠にありがとうございます。

構成・演出 小笠原くみこ

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