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安田雅弘演劇の正しい作り方

【演劇の正しい作り方⑬】レッツ柔軟(体育としての演劇5)実演編その2/96年6月号

演劇の正しい作り方13/96年6月号

 〈心に正直な身体〉
が求められる。
 〈心と身体の通りがよいこと〉
と言い換えてもいい。
 身体トレーニングの目的を一言で言うとそうなることはすでに述べた。
 迷信が一つある。
 〈身体の固い奴は、頭も固い〉
 科学的な根拠はないので今のところ迷信の域を出ない。また、例外はもちろんあるだろう。が、概して関節の固い人は頭の柔軟性も乏しい印象がある。老化と関係があるのかもしれない。年齢とともに硬くなるのはある程度仕方ないとして、創作の現場では、まあ一般に頭も身体も柔らかい方がいいと思う。つまり、この迷信は経験側としては明らかに存在すると思う。科学の証明を待とう。
 自分自身、大学で演劇を始めた時、身体はコチコチだった。演劇についての考え方も今に比べてはるかに保守的で固定的だったと告白しておこう。
 話がそれた。
 繰り返しになるが、「柔軟運動」をする上での注意点は一応次のようなものだ。

◎伸ばす場所を意識する。
◎痛かったら息を吐く。
◎慣れないうちは人を押さない。
◎できるだけ毎日やる。

 つまりはこういうことだ。
 〈気持ちよくやろう!〉
 これは医学的にも立証されている。同じ作業をしてもイヤイヤやるのと気持ちよくやるのでは本人への影響がまるで違う。
 一人でワビしく食べると食中毒を起こしてしまうような物でも仲間でワイワイ食べると何でもないということがある。「気持ちよく」やると身体の免疫力が高まるのである。
 何ごとも「気持ちよくやる態度」こそ演劇によって培われる第一の財産だとぼくは信じている。最近はやりの「プラス思考」と根は同じだ。
 これは、『医学としての演劇』の第一歩でもある。

■股割[マタワリ、マタサキ]・横(股関節)
☆両足を伸ばして両手を床につき、自分の体重をかけながら股関節を開く。次に、両ヒジをついて同様に股関節に体重をかけて開く。
[check!] 両足のカカトを結んだ線の上に股関節が来るようにする。両手をついた時はその線より後ろ、両ヒジをついたときは前に行きやすい。交互にくりかえす。顔はあげておくようにこころがける。

■股割・縦(アキレス腱~ふくらはぎの裏~ももの裏~股関節)
☆右ひざをたて、左足はななめ後ろにそえる。体重を右足にかけ、右ヒザを押しながら右アキレス腱を伸ばす。
☆両手をつけて腰を上げ、左足を伸ばして、左アキレス腱を伸ばす。
[check!]両足の方向をできるだけ平行にする。
☆左足を伸ばしたまま右足のヒザも伸ばす。次に、右足の爪先を上げる。
☆そのまま両足を前後に滑らせるようにして開脚し、自分の体重をかけながら股関節を開く。
[check!]うしろ足は足の甲が床につくようにする。胸を張るようにこころがける。左右おこなう。

■足首の回転(足首)
☆左右フレックスの状態にして伸ばし、そろえてすわる。小指が床につくように足を開く。小指を床から離さないようにして前にもってゆき、両足ポイントの状態にし、再び両足フレックスに戻す。
[check!]ゆっくりと、足首の各関節が伸びているのを確認しながら、何度かくりかえす。ヒザを曲げないようにする。

■身体で輪を作る(足の裏~ふくらはぎの裏~ももの裏~背中)
☆両足先を持ってヒザを曲げ、背中はそらせてヒザとももがお腹につくようにする。
☆足先を持ったまま、ヒザを伸ばしつつ、背中を曲げ、ヒザとお腹をできるだけ離して輪を作るようにする。
[check!]ゆっくりと、関節が伸びているのを確認しながら、何度かくりかえす。

■身体をひねる(体側)
☆右足を伸ばし、右ヒザの右側に左足をつく。上体を左側にひねりながら、右のヒジを左ヒザの左側につけ、そこを支点に息を吐きながら後ろを向くように身体をさらに左側にひねる。
[check!]左右何度かおこなう。

■股関節の開閉(股関節、ヒザ)
☆両ヒザを曲げ、両足の裏を合わせて腰に近づける。かかとが腰から離れないようにして両ヒザを床につけるように押す。
[check!]上体を腰にしっかり乗せるようにこころがける。
☆両手を後ろの床について正座の要領ですわり、ヒザをつけたままかかとをできるだけ前にもっていく。
[check!]足首はフレックスを維持するようにこころがける。

「演劇ぶっく」誌 1996年6月号 掲載

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