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コラム

安部 みはる演出ノート谷 洋介

僕らはみんな逃げている/2024.2-3

昨年5月から彼らとの稽古が始まった。
しばらくして、「私が面白いと思っていることはこれだ!」と自信を持っている人が少ないと感じた。
他人のアイデアにのっかってダメだった時「自分のアイデアじゃないから……」と言い逃れをしているような印象であった。

昨今の世の中も、ハラスメントを起こさないようにと敏感だったり、過去の過ちをごまかそうとしたり、SNSで炎上しないように……などなど、責任逃れをしようと必死になっている。
逃げているし、そりゃ逃げるよね、ということもある。
そういう時代だからしょうがないと言ってしまえば、それまで。
でも本当にそれで良いのだろうか。
そんな時代と、ニュージェネレーションの彼らと、そして社会に対応できず演劇という世界に逃げ込んだ私が重なって、『僕らはみんな逃げている』というタイトルにした。

このお芝居には、元々台本はなくストーリーもありません。稽古の中から出てきた選りすぐりのシーンをコンセプチュアルにまとめたお芝居です。
どうぞ、あまり頭で考えずにご覧いただき、観終わったあとの後味をお楽しみください。

何かに追われている草食動物のような彼らが、少し立ち止まり、立ち向かおうとする瞬間を見逃さないでください。

本日はご来場いただき、誠にありがとうございます。

構成・演出 谷 洋介

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『僕らはみんな逃げている』の出演者たちは、存在しているだけで十分魅力的なひとたちだ。魅力的ではあるが、現時点で素材にすぎない。
私は1月から演出助手として作品に関わってきた。私の使命は、彼らがめちゃくちゃお客様に愛され、信じられないくらい笑いを取り、普段とは全く違う顔をいくつも見せる、スーパー魅力的な俳優になれるように全力を尽くすことだ。
しかし、私がどんなに目を血走らせて彼らの魅力を見逃すまいとしても限界がある。自ら自分の魅力に気づき、失敗を恐れずに向き合わなければぶち当たった壁を乗り越えることはできない。
勇気を出せ、自ら摑み取れ、明日はこの世にいないかのように、逃げずに今を生きるんだ。
舞台で、彼らが最高に輝くことを私は他の誰よりも楽しみにしている。

演出助手 安部みはる

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