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コラム
小笠原くみこ演出ノート
本日はとても暑い中、若手公演『夏の夜の夢』にご来場いただき、誠にありがとうございます。劇団は今年で40周年を迎えることができました。『夏の夜の夢』は20周年を迎えた際も上演した作品です。20年ぶりにフレッシュなメンバーと新たな視点で取り組むこととなりました。40年も劇団が続けてこられたこと、そしてこの公演が上演できることは、ひとえに応援してくださる皆さまのおかげです。この場をお借りして、心よりお礼を申し上げます。
『夏の夜の夢』は、色々な階層の人間と妖精が登場し、交錯し、混乱する物語です。この混乱に一役買うのが、妖精パックです。私たち人間は、秩序やルールがあってこそ集団や社会が成立することが大人になるほど染みついてしまいます。混乱をできるだけ避けるように先回りし、いつの間にか身についた価値観や世界感で自身をまとってしまいがちです。一方で、本来の自分をどこか置いてけぼりにしてしまう矛盾や怖さを奥底で感じてしまうことはないでしょうか。この物語では、パックが混乱を巻き起こすものの、それぞれが本来の自分を取り戻します。混乱の前と後では、世界が少しだけ違って見えます。混乱そのものやパックのような存在は、私たちの人生の中で様々な価値観に出会うきっかけとも言えるのではないかと思います。
今回の演出では、舞台をシーシアス公爵の家と見立て、それは日本家屋としました。そしてパックはこの家に存在する座敷童のような存在として描きます。このアトリエにも、そして皆さまの傍にもいるかもしれないパックを受け止めていただければ幸いです。
構成・演出 小笠原くみこ