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コラム

大久保美智子小笠原くみこ演出ノート

ダイバー/2015.3

本日はご来場ありがとうございます。演出を担当しました大久保美智子です。
「研修生を相手に、40歳を越えたおばさん(私)が本気になる」
これが私の今年の裏テーマでした。
だからほぼすべてのメニューを研修生と一緒にやりました。
例えばランニング。おばさんが髪を振り乱して研修生を追いかける姿は、格好悪くて笑えるものだったと思います。この格好悪さから何かを学んでくれないかと思っていました。

人が人に対して真剣になる。
そう生きようとすると、実際いろいろな不具合が出てきます。
人との関係の中で、自分のことすら把握できていないと突然気づいたり。
自分が面白いと思うものを、みんなはそう思ってくれなかったり。
何がしたいのか分からなくなったり。
人を思っているつもりで、自分を押しつけていたり。
自分が思うように人は動いてくれないから、当然無様な事態になる。格好悪い。面倒くさい。演劇の現場はそれらの連続です。いやむしろそれらは演劇の餌なのです。私たちは生贄のように、面倒くさい事態を演劇に捧げています。
小さな一つのシーンの中に、どれだけの無駄な稽古が隠されているか、想像して楽しんでいただけたらと思います。

最近研修生を見ていて「彫刻師が木の中に仏を見て、それを彫りだすっていうアレに似てるな」と思いました。彼らの中に眠っていてほられるのを待っている、そんな「産まれるべきもの」を見つけたい。
その作業も終わりに近づいています。
きっと私が彼らの中に見ようとしたものを遥かに凌駕した異様なものが、ゴロリと姿を現すことでしょう。それを手にするだけの稽古はしてきました。
だから自信を持って飛び込み台に立ってください。
高く飛べ! 深く潜れ! 劇団山の手事情社第二十一期研修生!

構成・演出 大久保美智子

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「ダイバー」の創作に携わり、あることを思い出した。

中学にあがったばかりの春、1人のクラスメートが亡くなる。自殺でも病気でもなく急性心停止。私は亡くなった彼女のことが苦手で、彼女が突然この世から消えてしまったことに、正直あまり痛みを感じなかった。田舎の学校で人数も少なく、小学校からほぼ持ち上がりのメンバーだった同級生たちは、突然のことに驚き悲しんでいる中、私は悲しみの感情を作りだそうとし、涙を流すことに集中していた。3日間炊飯器で保温状態を続けたマズイ白飯を食べたような気分だった。

私は、想像力が足りなかったのだと思う。亡くなった彼女のことを想像することを。

今回の修了公演には、約2ケ月前から関わり、一緒に作品を創作してきた。今回のメンバーは、例年に比べ異色だ。現役の大学生から50代のオジサンまで在籍。全身をアンテナにして、彼らの中に潜むモノを想像し創作活動は続いた。それは、私に新たな挑戦と発見を与えてくれた。この場を借りてお礼を。

そして、お客様には、観劇中チクッとしたり、ピリっとした感覚が生まれたなら、そのことが何なのか、ぜひご自分の内側に耳を澄まし、想像していただけたら、うれしい限りです。

構成・演出 小笠原くみこ

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