09/07/04

タイタス/ルーマニア

エレベーター・ガール

ルーマニア3都市ツアー。約2週間の旅。
1週間を過ぎたあたりから、白いご飯と納豆と味噌汁が恋しくてたまらなかった小笠原くみこです。
ああ、やはり日本人だわ、私。

私が一番驚いた出来事は、ブカレストで出会った
エレベーター・ガール。
正確にはガールではなく、おばちゃんですが。

そのエレベーター・おばちゃんは、劇場隣の建物の中にあるエレベーターにいました。
6人くらい乗れば満員と感じるほどの広さの
エレベーター。
その中でおばちゃんは、操作盤の前の椅子に座り、
足元には大きなバックを置き、一心不乱に刺繍を
しています。扉が開くと、一言も発せず言われた
ままにボタンを押します。そしてエレベーターの
規定人数以上の人が乗ろうとするときだけ、
「乗れないよ!」みたいな言葉をルーマニア語で
言い放ち、刺繍に戻るのです。
ちなみに、そのおばちゃんの体格は「ふっくら」というより「でっぷり」というほうが近いでしょうか。

あんた、ボタン押すだけかいっ?!
刺繍していいのかよっ!
あんた乗ってなかったら、あと2人か3人乗れるじゃん!
必要なのかい!? あんたは?!
このエレベーターにィィ!!!!
(リピート3回)

あきらかにエレベーター・ガールとしての時間より、
刺繍している時間のほうが長い。
それでは仕事と言えないのでは?!
(給料をもらっているのかは定かではありません)

でも、そこにおばちゃんは存在している。
必要とか必要じゃないとか、
そういう概念などないかのよう。
日本だったら、特にこのご時世、
必要じゃない仕事、機能的じゃないものは、
どんどんカット。

この差が、きっと演劇大国ルーマニアと、
日本の差なのかも。
この「差」について、しばらく考えます。


小笠原くみこ

09/07/03

タイタス/ルーマニア

怒涛

何だったんでしょうか。
ツアー中の天気の変化と同じくらい、
恐ろしく刺激的な毎日でした。

舞台の外でも、本番のない日でも、
何かと出会い、刺激を受け、
まるでずーと本番だったような
体力的にも精神的にも怒涛の16日間でした。

ルーマニアは芸術が身近にある国でした。
エレベーターの片隅に刺繍をするお婆さんが
座っている国でした。

もう少し具体的に振り返ろうと思ったのですが、
なかなか書ききれません。

劇団員はもちろん、タイタスを見てくれたお客様の
反応、ラドゥ・スタンカ劇場の女優オフェリア・ポピー、
アリエル劇場のメンバーたち、ブカレストで見た舞台、
シビウやブカレストの街角やバーで出会った人たち・・・
たくさんの「人」に刺激をもらいました。

帰ってきて自分のなかに確かに変化がありました。
今後の活動に還元していけたらと思います。


越谷真美

09/07/02

タイタス/ルーマニア

演劇と生きる人たち

これは、ロシアで公演した時も感じたことなんですが、
多分ルーマニアの人たちにとって演劇は
「なくてはならないもの」
なんですよね。
正直言って今の日本人にとって演劇は
「あってもなくてもいいもの」
です。
もちろん、なくてはならないと思っている日本人も
たくさんいますが!
大多数の人が、
「ちょっと変わった趣味の人たちが演劇を見る」
とか
「いつかテレビに出るための登竜門」
だと思っていると思います。

ルーマニアでは劇場ごとに劇団があり、
そこでレパートリーや新作を上演します。
シビウのラドゥスタンカ劇場(私たちの公演した劇場)は
とても人気のある劇場なのですが、
そこに唯一日本人の俳優さんが所属していて、
「こっちでは、テレビや映画の俳優の仕事と
舞台の俳優の仕事は全く別のものと認識されている」
とおっしゃっていました。

そして、今回のツアーでルーマニアのたくさんの
演劇を愛するオーディエンスに出会い、
そこで暮らすたくさんの俳優さんに出会い、
2週間ほどでしたがルーマニアという場所に身を
置いて、今、日本で演劇を続けていくことの難しさを
感じるとともにやり続ける必然性を大いに感じました。

日本の文化はテレビやビデオ、マンガなど
室内に偏っていく傾向にあり、それは、
日本人の生活の仕方を象徴していると思います。
文化として否定するわけではありません、
ただ、偏っているのがおかしいと思うのです。
そして、その弊害も確かにあると思います。

日本人よ
「外へ出よ!人と会おう!」
です。
(ちょっと寺山のパクリっぽいですが)
みんなを家から引きずり出せるような魅力的な演劇に
私はなりたい。
(ちょっと宮賢のパクリっぽい感じの終わり方で。)


倉品淳子