11/08/07

社会人WS

番外編 PART-1                                   「いそがしい社会人のための演劇ワークショップ 第二弾」に向けて

普段の稽古場日誌とは少し趣向を変えまして、
今月末から始まるワークショップについて、書いていこうと思います。対談方式です。

話し手/小笠原くみこ、三井穂高

〜「私とドラマ編」では≪ショート・ストーリーズ≫と呼ばれる寸劇作りを行います。台本はなく、参加者の方が自分たちでシーンを立ち上げて演じるというメニューです。具体的には、まず自分たちが誰か、どんな人間関係か、そこはどこか、時間は? 季節は? といった具体的なことを話し合ってもらいます。さらに、シーンの中で何かを起こしてもらいます。〜

小笠原(以下、小)…ドラマと言えば、この間、後輩と駅のホームで「ロンバケ」のラストシーンのまねをするっていうのを繰り広げたよ、深夜に。

三井(以下、三)…どんなドラマでしたっけ?

小…キムタクと山口智子主演の恋愛ドラマ。(ドラマの詳細な説明が続くが省略)

三…それ見てないですねえ。

小…まあ、このテレビドラマに限らないんだけどさ。こういう類のテレビドラマのような恋愛が、いつか私にも訪れるんだ、訪れて欲しいと、ある時まで思ってたなと。

三…白馬の王子様はいないんですよね。恋愛に限らないですけど、テレビドラマには描かれないようなことが起こったりしますからねえ。
昔、お互い多分好き同士だなって人と、ずっと話し込んでいたことがあるんですよ。「好きです、付き合いましょう」と言い出すタイミングをはかっていたんですね。ついに男性から告白されて、次はキスするか?! という場面がやっと訪れたんですが、私、すごくオナラしたくてたまらない状態だったんです。

小…あはは。それはしんどい!

三…夜中じゅう話して、やっと告白までこぎつけたのに、うれしい気持ち反面、お腹がはってしょうがなくて。いつトイレに立つかタイミングをはかる気持ち半分で。相反する2つの状態が私の中にうずまいているんですよ。

小…それは、確かにテレビドラマに描かれないねえ。どちらかとその話はお笑いだけど。でも、そうそう。そういう複雑な状態や気持ちが実は日常生活の中にあって、そういうテレビドラマでは描かれない状態を≪ショートストーリーズ≫では探っていくことが大事だよね。

三…あこがれの恋愛に自分を当てはめて暮らしていくって、結局無理が出ますよね。そうじゃない自分のドラマを演じるって、自分をちゃんと見つめる作業ってことですね。

小…自分が経験したことを、そのまんま演じなくちゃいけないっていうことではないけれど、自分の身の回りにある、ありそうなネタを見つけるアンテナは、敏感になるね。


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研修生の熱い稽古場日誌も日々更新!
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11/07/20

傾城反魂香/ルーマニア

心新たに

やっとルーマニアに足を踏みいれた。

一昨年、昨年と劇団員から話を聞いて、“ルーマニア時間”に対応する心づもりはできていたが、意外なことに気づかされた。

過密スケジュールで動いている俳優やスタッフのために、お茶場(休憩所)を早く設置しようとロビーのテーブルを動かしていると、オバさんと引っ張りあいに。使ってはいけないテーブルだったかと思いきや、もっと大きいテーブルを用意してくれている様子。しかもテーブルクロスまでかけて。

公演時に配る当日パンフレットの印刷を頼む。確認したいので昼過ぎに見せてね、と言ったのに、なかなかあがってこない。本番に間に合うか気が気でない。そうこうしていると開場30分前、カラー印刷したものが届けられた。

なんで急いでいることを分かってくれないの?
なんで早くみせてくれないの?

これかっ! みんなが言っていた“ルーマニア時間”。
でも、ここは日本じゃないから、ひとまず我慢。


少し落ち着いて考えてみた。
“ルーマニア時間”があると思うのは日本人だけなんじゃないか。

彼らは最善のものをつくるためには、ギリギリまで時間をかけるという信念のもと、舞台上以外でも最高のクオリティを求めてやってくれたのではないだろうか。
そう思うと、その後のことは色々受け入れられるようになった。
と同時に、私の今までやってきたことが、どこかスピードに押されていたのではないかと反省。

日本人社会では絶対に得られなかった「ゆとり」の良さを実感。
「ゆとり」と言っては失礼だろうか。
舞台人としての真髄を目の当たりにした。

入団10年を迎えるに当たって、大事なことに気づかせてくれたルーマニア。
気持ちを新たに12月公演の準備をはじめております。
ぜひ皆様、足をお運びください。
お待ちしています。

福冨はつみ

11/07/14

傾城反魂香/ルーマニア

ブカレスト本番前日

稽古もそこそこに、安田さんと、あるシーンの出演者数名でとある高校に行くことになる。
話によると、明日の宣伝も兼ねて、ブカレストの、日本愛好会のシンポジウムでデモンストレーションをするということらしい。

現地につくといきなり仰天。
浴衣姿のルーマニア美女がお出迎え。しかも団体さん。
日本人体型こその浴衣、「丈あってねーだろが」とつっこみたいところだが、ちょいミニスカ感もいやはや。
隣の川村さんと声をそろえ世界共通言語となっているらしい「KAWAII!」を連発。聞こえるように。
通じてるかどうかはさておき。

入り口入って、すぐ正面が講堂、
その入口には日本の一風景として、漆塗りのお盆に湯飲み茶碗ととっくりが。
「そこは(とっくりじゃなく)急須でしょ」と早速突っ込む安田さん。
「まあ、(日本の)雰囲気雰囲気、ねー」とうまくいなす通訳志賀さん。頼りになります。

ブカレストの大学で日本語教師をしていらっしゃったという方に案内され2階へ。
いろいろな日本文化の教室を開いているみたいで、その作品展示がされてる。文化祭みたい。
やはり漫画、意外と上手い書道、俳句、また水墨画みたいなのもある。いろいろ興味持ってくれてるんだなと関心。茶道、おどろきの囲碁、盆栽まで。
「これはただの腐った木の鉢植えじゃねーの? 葉がばっさばさだしよ」と突っ込みたくなるがそこは我慢。
生花教室では、生徒さん数名で今まさに授業を始めている。
生徒さんルーマニア人。先生もルーマニア人。熱心に、どでかい葉っぱをザクザクと剣山へ。
スケールでか、ど派手生花。ものすごい違和感、でもなんか嬉しかったりして。生花なんも知らんけど。

衣装に着替え、いよいよデモンストレーション会場の講堂へ。
前のシンポジウムがまだ終っていない。プロジェクターにスナップ写真を写し、何やら説明をしている。
皇居の回りをランニングする日本人、つぼみの桜、浅草雷門、通勤途中らしいサラリーマンとか、日本の東京の何気ない風景。
よく目を凝らすと、全て写真には日付が…。

「2011.03.12」

内容全くわからなかったけど、僕が思うに多分、大震災のあった翌日も日本は変りなくて、ニュース(どんな話になってるかはよく知らないけど)で報道してるような状況ばかりじゃなく、今でも僕達ルーマニア人の思っている良き日本であったよ、だから安心して、的なことをレポートしてるんだろなと思って、ちょいと感動。

いよいよデモンストレーション。壇上に並ぶ。
安田さんの挨拶、素晴らしい歓待に刺激を受けたのでしょうか、やけに長い。彫刻家ロダンの弟の話、日本人の美学の話。とてもいい話なのですが、ルーマニア人には、ぽかんだろなと、隣の山本さんと目を合わせる。無言でも分かる不思議、激しく同意。
で、ちょっとだけ四畳半、園田が出ハケでコケるニアミス。初ルーマニア公演だもんな、気合入りすぎたかの。
温かい拍手。とても心地良い。

お土産の花とお菓子を持って、オデオン劇場へ戻る。

こんなにも離れているのに、(もしかしたら僕らよりも)日本にとても親近感を持ってくれている人達が沢山いるんだなと改めて実感した、3度目のルーマニア。
これからもよろしくお願いします。

岩淵吉能