11/01/31

The Dead Father

『修了公演にまつわる話〜研修生編』

山の手事情社の「俳優になるための年間ワークショプ」の修了公演を見てくださるお客様から「よく分からなかったよ」という感想をいただくことがある。
しかし、最近私は「よく分からない」事は決して悪い事ではないと思っている。

要は、「よく分からない」事をちゃんと楽しんでいただけたかどうかが大事なのだ。
世の中には、相撲の幕下力士とか、
プロ野球の2軍の試合とか、ボクシングの4回戦の試合など、ひしめき合っている沢山のたまごの中から金のたまごを見つけ出し、自分の予測どおりにサクセスして行くまでを好んで応援するのが好きな、
いわゆる“つう”な人がいる。
山の手事情社の修了公演にもそんな“つう”なお客様がいる。
中には、「本公演より好き」と言ってくださる方もいるらしい。
なぜそんな風に“つう”を惹きつけるのか。
理由はそれだけではないが、そのひとつは、こういうことではないかと思う。
研修生は一年間の稽古の中で、修了公演の出番を自分で獲得している。
今まで発表した≪物真似≫、≪フリーエチュード≫、≪漫才≫などの≪山の手メソッド≫を組み合わせて公演を作る。
もちろん台本はない。自分の出番は自分で増やさなくてはならない。
私の時もそれは同じだった。
年が明けると段々と組み込むネタが決まってきて、「あー、舞台でやれることが何もない。」と落ち込んだり、
1つでもいいから見せ場を作らねばとあせり、もがいた。
やっとのことで≪ものまね≫が採用されたのになかなか面白くならず、メソメソしたりした。
そんな追いつけ追い越せのデッドヒートがお客様に伝わっているのだと思う。

毎年、この時期になると、追い詰められた研修生が時間も忘れてひたすら稽古している姿を目にする。
日に日にいい顔になってきているのを見ると、こちらも衣裳を縫う手に力が入るというもの(私は去年から衣装を担当している)。
頑張れ、金のたまごたち。
みんな何か“もっている”

安部みはる


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11/01/30

The Dead Father

『汝は起爆剤なりや』

年が明けたと思ったら、すでに1月末。
…ということは、本番まで残り1ヶ月。
え・・・もう??
この間、麻里絵さんが作ってくださった本番逆算日めくりカレンダーを見て、その数字の小ささに改めてびっくりしました。
衣装やら小道具やら本番に向けてのお仕事もちらほらと姿を見せ、通常稽古とは一味違う空気が稽古場に漂っています。

稽古も現在、最後のネタ出し中。
そんな中、私という人間が構成されるにあたって、大きな成分になっているであろう所に触れるネタが、現在使われています。
「自分が秘密にしてきたこと」というお題がきっかけ。
…特別に秘密にしてきた訳でもないですが、あえて触れないようにしていたのかも。
自分の中で解決してるのかどうかも、よくわからない。

「何か変わるかな」なんて、桃香と話してたけど。
そのネタ関連は、少しチリチリします。
お、新感覚!

もし本番にのるとして、1ヶ月向き合ってどんな想いが生まれるのか。
楽しみなような、ちょっと怖いような。
…そういえば今年は、そういう自分の心を引っ掻くようなネタが、多い気がします。
(斉木さんの嗜好なのかしら)

願わくは本番、お客様の心も少し引っ掻けますように。

無我夢中で五里霧中だった去年度のこの時期。
今年度は、少し離れて自分のことを考える時間がとても多い。
できるようになったこと。
未だ苦手なこと。
あぁ、今、私は焦って空まわりしてる。
あぁ、今、私は思いをちゃんと伝えられている。
何ができて、何ができないのかが、自分の中で少し明確になってきました。
(…かといって、できないことができるようになったりは、なかなかしないんですけど(笑))
(いつか、私にも狂った演出家※(みんなを引っ張る役目)ができるようになるのかしら…?)
自分の今立っている位置をしっかりと把握して、
最短距離で前進したいなぁと、そう、思っております。
※≪山の手メソッド≫の中の≪インジャンジョー≫という≪フリーエチュード≫

土方あいか


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11/01/27

The Dead Father

『修了公演にまつわる話〜研修生編』

今まで参加していた舞台と、研修生修了公演での最大の違いは自分達の頑張り云々ではなく、作品の完成度を面と向かって突きつけられたこと。

「これじゃぁ2000円とれないよ。」
楽日のマチネ(お昼の回)で演出担当から言われた
一言。
ズドーンとココロに響いた。
(そんなこと、今言うんかい?!きっついわー。)
って、思った。

2000円。芝居のチケットとしては恐らく平均より下であろう。
『2000円』の『価値』が『無い』芝居。
だけど、自分達は『2000円』の『チケット代』を『頂いて』いる。
自分達の芝居の対価。
自分の今やっている芝居が『本当は』幾らの価値があるかなんて、恐くて考えたくない。
でも、本番に入ってからそのコトにちゃんと向き合うコトの出来る役者って、どれくらいいるのだろうと今でも思う。
だから、
(あぁ、プロって、そういうことか。)
って、頭に自然に浮かんだ。
どれだけ頑張ったつもりでも
つまらないという現実は変えられない。
一年間やってきた集大成。
それがチケット代金以下の『価値』に終わったら
あまりにも、悔しすぎる。
何とかしなきゃ。焦りと、苛立ちが湧き起った。

だけど、
その気持ちを、どう演技に反映させればよいか全くわからない。
だから結局、出来るコトをやるしかなかった。
それが今の自分の実力。
不甲斐なかった。
ところがどっこい、
観に来てくれたお客様が結構な確率で
「面白かった!!」って言ってくれて
人によっては何故か泣いてくれている人もいて
あ、ちょっと安心って思って早々に調子に乗った自分がいて
打ち上げでは、それはそれは楽しく飲んでいる自分がいた。
(バカだなぁ。)
って思うけど、それもこれも必死さと視野の狭さ故。
とにかく、頭からつま先まで、修了公演に染まりきっていて、一喜一憂していた。
あの日々に戻りたいとは決して思わないけれど
本当にそのコトしか考えずに過ごせた、そしてそんな奴らに囲まれていた。

という意味で、
研修生修了公演はホント楽しかったです。

小栗永里子