11/01/23

The Dead Father

『修了公演にまつわる話〜研修生編』

修了公演に向かっていく研修生たちの連帯感とパワーは、良き場合もあれば、面倒な場合もあるが、とにかく凄まじい。

あらかじめ用意された台本も、衣装も、音楽も、何もなく、すべてはお前たち次第だと追い詰められる。
私のときは14人の同期がいて、恒例の《ものまね》は全員はのせないと言う。
私のネタも一度その計りにかけられ、最後の審判前の稽古場の静けさといったら死刑囚の気分だった。
辛うじて本番にのった。
のったからには必死に練習した。
大好きな親友の物まね。
いつの間にかデフォルメが進み、本番を見にきてくれた親友とはしばらく気まずい関係となった。…がやむを得なかった。
《SS》と呼ばれる寸劇では、そういえば女3人で三姉妹の話をやった。
長女が末っ子に異常な愛情をかけ、真ん中の私は家を出ていく。
3人で姉妹の関係を色々相談した。相談し過ぎて芝居がこんがらがってきた。
頭を冷やそうとご飯を食べに戻ると私のコッペパンを同期の男が噛っている。
何故だ…
何故君は私のバックを漁ってパンを…
不条理さと日々張り詰めている緊張感からか涙がでてきて、姉と妹が慰めてくれた。
その出来事がその後の芝居に役立った…かはちょっと忘れたけど。

《四畳半》大好き世代だった私たちは、『アンドロマック』という戯曲に夢中になった。
男女ペアでエルミオーヌとオレストの掛け合い。センターポジションを争った。
ありえない高低差でもはや表情の読み取れないポーズになるペア、様式美を越えた生々しさを讃えるペア、まさかの肩車ペア…

あと、そう《ルパム》
エロさと身体性を追求しているうちにどんなポーズも恥ずかしくなくなる。女ルパムと呼んだ顔と手だけの<ルパム>の練習といったら。女ってホント他人に厳しいなとちょっと嫌気。
そう思いながらも毎日のように自主練した。

5年経ちますが、
ぞろぞろ思い出してくる…。
正直言って。
当時何に一番追い詰められたって、日毎やつれていく研修生担当劇団員、笑美さんと野々下さんの姿だったと思う(笑)

たとえなんちゃって四畳半と呼ばれても、誰よりも夢中だったよなあって変な自負がその後の支えにもなっています。
ああ、この先何でも出来るやって思えた。

山の手の修了公演の魅力はなんといっても舞台に対して無我夢中な自信に溢れている研修生たちの姿ではないでしょうか。
今年もまた初心にかえる舞台が楽しみ。

『The Dead Father』
ご期待ください。

越谷真美

11/01/21

The Dead Father

『父』

こんにちは、研修生の中川佐織です。
2011年になりましたが、もう1月の半分が過ぎちゃいました。
二月もあと少しに迫っています。
「The Dead Father」稽古場。
未だ父(という超えるべき存在)の姿、私見えておりません。
人違いばかりです。
実際問題、『父』ってなんなんでしょう?
私は『父』=『母』な現代な家庭の子なので、『母』なのか?
と思いましたが、また違う気がします。
第二の母に当たる、ピアノの先生か?
尊敬する人?軽蔑する人?
それともやはり実父?うーん。

「超えようとしても超えられない存在」なんだと思うんですが、
それが自分の中で当たり前だと無意識に刷り込んだ存在とか
絶対しないと思っていた事を自分がしていたりしますよね
超える気がなかったけど、一番影響を与えていた存在とか
本当に尊敬する偉大な人物とか
うーん。なんなんだ!父よ?!

今日の稽古はエチュードが八割な日。
私は体調を崩して乳酸菌が八割な日。
節々がイタタです。咽もイタタです。

さて、エチュードは「事件が次々に起る空間」
「○○だー!」って、1人が事件を提示したら、
それがどんなものかキャッチしてリアクションを提示、
その提示されたものを周りは共有しあう。

私は「声出さなくていいよ」と言われたので無言劇です。
静かな演劇です。
声使えないとこんなに不安だとは…発見です。
空間に居辛いです。体が動きません。
嫌いでは無い強制力なんですが、できてはいません。
超えるべき「存在」よりも超えるべき「課題」が多いんです。

中川佐織

11/01/20

The Dead Father

『修了公演にまつわる話〜担当編』

研修生の修了公演は、自分の劇団ながら毎年良い公演だな〜と感動させられます。
一年間限定のメンバーですし、そのメンバーでの最初で最後の公演なので演じる側も演出側も熱さがすごいです。

公演を見ていると、なんか泣ける!
実は毎年密かに泣いています。
今年は誰が泣かしてくれるか、楽しみです(^O^)
と、担当でない身分の時はそんなのんきな気分です
が、担当となった者にとっての修了公演は地獄のような作業。

研修生にとっても
自分にとことん向き合って
他人にとことん向き合って
違う違うと否定して
もっともっとと追い込んで
一回きりのメンバーなので、
どう転がっていくか分からない
ぶっつけ本番の一年間、
頭も身体もフル稼働してん寝られない日々が続く。
本当に死ぬかと思う日々
だけど一年間こんなに演劇のことを考えることはないので
本当に贅沢な日々

私が研修生修了公演の担当になったのは2005年
と2006年の連続二年間でした。
2005年は男6人女10人・途中1人脱落(泣)の15人のメンバー
2006年は男2人女9人・こちらも途中1人脱落(泣)の10人のメンバーでした。
正直、み〜んな“下手くそ“です。
研修生も担当の私も。
日々即興
手探りなので、暴走する事も多々あった気がします。
思い返せばもう少し要領良くやれただろうに・・・
まぁでも“下手くそ”なりに、
「演劇界に革命をおこすぞ!!」
と修了公演に向けてめちゃくちゃ意気込んでいました。
親の気分の私は彼等が魅力的に見えるよう試行錯誤の日々…
で、彼等が一番キラキラするのは
「やっぱり恋愛ものだな〜」と思い(今思うと安易なんですが)
男一人と女二人のグループを作り、私もやったことのないフランス文学を使い「良いペアを使うから、気合入れて作って」
と“下手くそ”の彼等にとっては鬼のような事をしていました。
おかげで稽古場は三角関係の男女でギラギラしていましたが(笑)

担当二人も研修生に負けずとギラギラし
とにかくぶつかる
何年か分の喧嘩をしたような気がします・・・
やっぱりもう少し要領良くやれた気がする
でもっ演劇は要領だけではできないんですよね
本当に生き物
手にかけた分だけ美しく咲くと思います。
そんな感じで、修了公演は穴だらけのデコボコな公演かと思いますが
もがいてあがいて回り道した分だけの
彼等の魂の叫びが垣間見れる公演なのではないかと思います。
二年間研修生を教える立場でしたが、
研修生を通して演劇について沢山の事を気づかされたと思います。
当時のメンバーに本当に感謝です!!
出来る事ならもう一度彼等と作品を作ってみたいなと思っていますが、
まだその時期ではないのかな?

2011年度の担当となりました。
また演劇についてとことん考えて行けそうです。

山口笑美