13/11/19

社会人WS

いそがしい社会人のためのワークショップ 第六弾 リポート8

いよいよ来週、発表会です。
この日までに、我々スタッフは大まかな構成案を考えました。

今回皆さんが発表するものは、「構成演劇」と言います。《ルパム》《エチュード》《ものまね》《ショート・ストーリーズ》といろいろなメニューに取り組んできましたが、基本的にはそららの中から出て来た面白い作品を選び、組み立てていきます。全体を通して一つの物語ではなく、一人一役でもありません。趣きの違うものが色々と見られるのが面白いところ。例えて言うならば、幕の内弁当といったところでしょうか。

この日皆さんには 、構成案と共に今回採用されたシーンや小作品をお伝えしました。また、一部のメンバーには新作シーンのオーダーも。《ものまね》が採用されなかった方々は、悔しかったようです。

全体の流れを確認した後、《ショート・ストーリーズ》や《ものまね》など各作品を復習したのですが、これにはかなり手こずりました。発表した時のキャラクター設定や感情の流れを忘れてしまい、起きるべき出来事が起きなかったり、言葉だけのやりとりになってしまいました。感覚を再現することは本当に難しいものです。何が問題なのか皆で検証ながら終了時間ギリギリまで取組みました。

本番まで残り一回です! 頑張って面白いものをお見せしたいです。

三井穂高

13/11/18

演劇的生活No.1

『価値』

あるお店に打ち合わせに行った時、一合12000円の日本酒がありました。ランチは1000円。夜飲みに来たらどうなっていたことか。まだ見ぬ世界はあるものです。試飲はさせてもらえないだろうか、もしくはおごってもらえないだろうか。とはいえ一合1000円の日本酒を呑まされて12000円だよ、と言われてもきっと私にはその嘘をみぬけないでしょう。相手の方に飲んだ事があるのか、どんな味なのか聞いてみると「水みたい」との回答がありました。では水でよいではないか、と思うのは私の僻みでしょうか。しかし1本何100万、何1000万もするワインもあるのだからそれに比べれば安いのかも知れません。その日本酒は年に12本程度しか造られず希少価値も付与してそれだけの値がつくのだそうです。当然のことながら市販はされていません。直接蔵元まで行って買い求めなければならないのです。品数の少なさ、現地に行かないと手に入らない手間、そういった珍しさが人の興味をくすぐります。また商品の値打ちを決めるひとつの基準にもなっているのです。当たり前といえば当たり前の話ではありますが。そうはいっても味がよくなかったら元も子もないというのも自明の理です。

話は変わりますが、近頃のお芝居の値段は高いように感じます。10〜15年前くらいはもう少し相場が安かったようにも思います。私のまわりの環境が変わったのか、演劇の物価があがったのか。それとも私の思い込みだったのか。それはよくわからないのですが、現在のお芝居は最低ラインが3000円。それ以下は学生演劇か社会人劇団のお芝居くらいしかあまりみかけません。物の価値をつけるのは誰なのか。客か、売り手か。演劇に関して言えば売り手のように思えます。自分たち以上の価値をつけているように思えてしかたがありません。採算をとることに躍起になっているのではなかろうか。それもいたしかたないことなのかも知れませんがこのままではお客さんは演劇から離れていく一方でしょう。そこに対して戦っている劇団は少ないのではないかと思います。

例えば一合12000円の日本酒は買い取りに行く交通費と人件費、その他の費用を鑑みてその値段になったと思うのだがそれは本当に妥当なのだろうか。もっと安くてもよいかも知れないし、ひょっとしたらこれでもかなり格安なのかも知れません。私のまわりの人達にこの日本酒の値段を話すとみんな一様に「高い」といった反応がかえってきます。あまり聞くことのない値段に対してどう反応するのか。おそらくごく一部の人間だけが興味をもって味わいにきてくれるのでしょう。そうして「良い」となったらまた来る。値段が高くてもまた来てくれるくらいの美味しい役者というのはどのようなものか。どのような生活や仕事をしていても自分に対して知らず知らず人間の価値が見出されるものです。私はそれがとても嫌だなぁ、と思うのですが、これはどうしようもないことなのだと一合12000円の日本酒なんてものを見るにつけ考えさせられます。

とりあえずその日本酒にそれほどの価値を私は見いだせるか。 私の価値基準は他人とどう違うのか。それを知ることも役者として重要だと思います。そしていつの日か、一合12000円の日本酒を飲みにいってやろうと思います。


石原石子

13/11/13

社会人WS

いそがしい社会人のためのワークショップ 第六弾 リポート7

いよいよ、残り4回となりました。
最終発表会に向けて、今までやったメニューを、ルールを変えたり設定を加えたりしながらおさらいすることが多くなっていきます。

身体が寒さで縮こまっているため、念入りにマッサージしてからのスタートです。
前半は、エチュードを中心に行いました。最初は家族ゲームです。前回と違い、家族がどんどん増えていくというもの。2人が何らかの家族のシーンを即興で作り、そこへ別の人が全く新しい家族のシーンを持ち込んで、最初の2人はその家族に便乗します。4番目、5番目のメンバーも同様に新しい設定の家族シーンをやり始めますので、どんどん人数が増えながら、変わらなければなりません。かなり難しいエチュードです。面白かったのは、言葉だけで埋めようとせず身体が伴っているものでした。本箱をくくりつける途中だったり、皆でメガネを探す家族が印象に残りました。最後には参加者全員での大家族が出来上がりました。

前回やってみて面白かったので、引き続き「過去の自分から今の自分へ」「未来の自分から今の自分へ」というテーマで、語ってもらうエチュードも行いました。皆さんで半円になり、一人は真ん中に立ってもらいます。真ん中の人は誰か相手を決め、自分だと思いながら話しかけます。前回は30秒の中でひたすら喋りつづけましたが、今回は言葉に込められた思いを大事にするため、

○話しかけたくなるまで喋らなくていい
○一言だけしか話せない(その言葉は何度言っても良い)

という決まりでやっていただきました。一言しか発言出来ないことに最初は戸惑っていましたが、あえてそういった制限を加えることで内側にエネルギーが溜まっていくのが感じられたよ うです。「目は口ほどに物を言い」と言いますが、目だけでなく体全体からそのサインは滲み出てくるものだと思います。前回に比べ、より丁寧にその作業を行ったため、重みのある時間となりました。ある参加者は、過去から今の自分にむかって「バカ…」と繰り返していました。それが字面通りではなく、様々な思いが込められているように思われ、ぐっときてしまいました。

最後は《ルパム》です。今までに創作した《歩行》や振りと、今回新たに作ったものを組み合わせ、ちょっとしたシーンにしました。これは最終発表会で使いたいと思っています。

ワークショップ終了後、有志で焼肉を食べに行きました。そこでは自ずと熱い演劇論に! やはり皆さん、活動の場を探しているようです。他にも、このメニューをもう一回やりたいとか、宿題を出してほしいなど、今回のワークショップに非常に興味を持って参加されていることが分かりました。これらの言葉を真摯に受け止めて、今後もワークショップを展開していきたいと思います。

三井穂高

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