11/06/07

傾城反魂香/ルーマニア

トゥルダ公演の報告です。

安田です。
6月7日(火)の夜、トゥルダでの公演がありました。
シビウに続く公演になります。
5日の夜から仕込むことができたので、じっくり準備できました。

難があったとすれば、古い劇場で照明用のケーブルコードがなく、新たに作ってもら分ければならなかったこと。
稽古場の気温が高く、クーラーもない中、汗だくだくで稽古したことくらいでしょうか。

シビウ国際演劇祭のフェスティバル・ディレクターのキリアック氏が昨年、一昨年のようにスタンディングオベーションがなかったことについて、「2階席は総立ちだったよ。1階の客は衝撃的すぎて立てなかったんじゃないのか?」と言っていて、半信半疑だったのですが、トゥルダでの公演を経て、そうだったのかもしれない、と思うようになりました。

6日には、市庁舎の議会場で記者会見。
1時間を超えるものでした。
よくこんなに芝居のことで話し合えるなというのが正直なところ。
http://www.youtube.com/watch?v=Ae--kjLoo0U&feature=related
さて、当日。
11:00からゲネプロをおこない、最後の調整をします。
ラドゥ・スタンカ劇場が一度やったとは言え、劇場のサイズも袖の位置も違うので、俳優やスタッフにとっては、重要な稽古です。

休憩を取って、19:00開演。
人口7万人の小都市、トゥルダ。
市長は大学時代に演劇活動をしていたとかで、劇場には予算も出す代わり、口も出すそうです。
4列目に市長の終身専用席があると聞きました。
その市長も観劇するとのこと。
彼は19:00ならその時間ぴったりに始まらないと、怒りだすといいます。

18:30に開場したものの、400席の会場はなかなか埋まりません。
「満席になるよ」とここでも聞かされていましたが、5分前になっても3、4割程度です。
10分前には市長も家族でやってきました。
外は19:00だというのに、日中にように明るい。
(日没は21:00過ぎです)
19:00過ぎからどんどんお客さんが入ってきて、満員になりました。
19:10開演。
市長は怒らなかったようです。

始まった瞬間、衝撃が走りました。
字幕の映像がずれていて、観客に読めない!

字幕を出すプロジェクターを客席に設置せねばならず、満員のお客さんが入場時に台に触れてしまったようです。
1ミリずれただけでも、映像になると数10センチのずれになってしまう。
永里子さんがカバーし、字幕がちゃんと見えるようになると、客席にほっとした声が漏れます。

日本人が公演するのは町の歴史上初めてということもあるでしょう。
しかし、この日の客席の興奮は私から見ても異常でした。
オープニング《ルパム》(ダンスシーン)が終わった瞬間、拍手が沸き起こり、次のシーンの岩淵さんのセリフが中断しました。

クライマックスのシーンでは、主人公のみやが、恋人の元信と別れてしまうのですが、そこが終わると、大拍手が起こり、一瞬ブーイングなのでは、と疑ったほどでした。
しかし、このシーンがクライマックスだと理解しているのだとわかり、ああ、ちゃんとついてきているんだ、それにしてもオペラやバレエのような反応です。
これならガラ公演ができるのでは。

2人が熊野詣でをするシーンの《ルパム》でも、大きな拍手が沸き起こりました。
こちらが望んでいた以上の反応です。
ラストシーンでは拍手が大きすぎて、俳優が曲の終わりを聞きとれず、きっかけが取れないほどでした。
http://www.youtube.com/watch?v=9-2-mxZvodE&feature=player_embedded#at=109
近松門左衛門、いけます。

安田雅弘

11/06/06

傾城反魂香/ルーマニア

トゥルダ・劇場入り

今日はトゥルダの仕込み。
二時間かかるバミリを昨日の下見のうちに終わらせ、基本的に時間にセカセカしないルーマニアの現地スタッフの方が、私達より先に劇場入りしている。

良好良好!!

照明は、朝から卓を設置したりプロジェクターを設置したり。
舞台はシビウからバラシて持ってきたパネルの接続に入り2個しかないインパクトを奪い合い振り回わす。
舞台監督の本さんは、指差しルーマニア語をパンツのポケットに常備しルーマニア語を振り回す。
「ダーダーダー!!」(ダーはイエス)
「ムルツメスク!!」(ありがとう)
「バトン、チョッツト、アァップ!!」(英語風)

さてさて、ルーマニアでは照明スタッフとして活動している私。バミリがない分早く吊りこみに入れる。よし、巻いていこう!!
ルーマニアの現地スタッフの方は基本的に、渋目のおじさん。
「おじさん、おじさん、これ、ココに吊りたい。」
言葉が通じないのをいい事に、呼び名は基本おじさん。そしてタメ語。
ツアー用の仕込みなので灯体の数は少なめ。日本なら一時間で終わるような量。
通訳の志賀さんの力を借りて現地の方と打ち合わせ。
「パーライト5灯ありますか。」
『1灯ならあるよ。』
「ココとココとココに灯体吊りたいんですけど。」
『うーん、ケーブルが足りないから買ってくるよ。』
け、ケーブルを買ってくる!?
そこから怒涛の吊り込みが始まった。おじさんがグルグル巻きのコードを買ってくるや否や、距離を測ってバツバツと切り始め、おもむろにプラグ(差込口)をつけ始める。
・・・・・・
とりあえず見よう見真似で参加。
『違う違う、こうするんだよ。』(って言ってたんだと思う。)
あー、なるほど。
そのまま数々のコードを作り続ける。
これ・・・終わるのか!?
と思いながらもさらにコードを作り続ける。
舞台に入るおじさんについて行くと、おじさんが灯体についているコードを引きちぎる。もう何がしたいのか分からなくなって来たぞ。って思っていたらおじさんも分からなくなってしまい、照明の菅橋さんさんと私はフリーズ。
・・・・・・
ノンノン!!
気合を入れ直し再び動く。
すると、他の現地スタッフの方が手伝いに!!
『ガター』
「ん??」
『ガター』
「終わった!?」
『ガター』
「ムルツメスクムルツメスク!!」
『ガター』
「菅橋さん終わりました!!」

12時に終わる予定だった吊り込みが終わったのは15時。
その後は照明スタッフの菅橋さんが22時までにちゃんと明かり作りを終わらせ何とか終了。

ケーブルを作ると聞いたときは目が飛びでましたが、ケーブルがないから無理というのではなく、買って来るという頭になる現地スタッフの方の臨機応変さに、懐の広さを感じた一日でした。

小栗永里子

11/06/06

傾城反魂香/ルーマニア

トゥルダへ

6月5日、2都市目のトゥルダに移動。
日本では考えられない大自然を縦断、北へ約200Km。

ルーマニアの人って、話すときにちゃんと目を見て話すんです。
車の運転中も。
そう、車の運転中。
まっすぐな道だからかなぁ、と思いきや、山越えのくねくねした道でも。しかも、今回の運転手さん、真後ろ向いて話すという高度な技をやってくれる。
全員で「運転手さん、前、前」
とっさに出るのはやっぱり日本語。すごい勢いで言ったので、さすがの運転手さんも分かった様子。この時は。
いつ事故が起こってもおかしくないルーマニアの交通事情。最後まで誰もケガしませんように。

福冨はつみ