11/05/26

傾城反魂香/ルーマニア

念を込め

早いものであと数日でルーマニアに渡航です。
居残り組の私は衣装作りをしながら一針一針に念を込めて恨みつらみを…
なんてしませんが、想いを込めて縫うております。
しかし、ほとんどがまつり縫いで出来上がっているんじゃ無いかと錯覚するくらいまつり縫いをしています。

スタジオ横のスタッフルームと廊下の空いたスペースで作業しているので、
キャスト陣がトイレや一服をしに行きかいしている中での作業です。

俳優達が一服の合間にシーンの動きを考え、隅で《四畳半》をしているのですが、
見ながら自分が《四畳半》を知らなかったらこれはシュールな光景だなと、
地面スレスレに動めく俳優陣を見ながら、早く衣装を仕上げて世界感を浮き彫りにしていかねばと手を早めるばかりです。

シーンの中にみやの菅笠が出てくるのですが、
想いは違えど馳せる気持ちは同じはずと思ってみたり。

中川佐織

11/05/25

傾城反魂香/ルーマニア

フォース

山の手事情社の独特な動きである「四畳半」は、
登場人物の機微を全身で表現するわけです。
「その手は本当にそれでいいの?」
「腰は? 顔は?」
「声の出し方はそれでいいの?」
演出家安田は役者の一挙一動を細かく指摘します。
そして、繰り返しこう話すのです。

「登場人物の感情のマグマに触れているの?」

複雑な背景の中でたまたま人は出会い、別れる。
その一瞬を舞台に表出させる為には、
内面、身体、声、全てを総動員しなければならない。
登場人物たちの魂を、全身で、感じること、発すること。
その意識の交換が舞台で行われていて、
さらに見ている観客と繋がって初めて『傾城反魂香』は浮かび上がって来る…。

ふと気づいたのですが、
それって「フォース」のことじゃなかろうかと。
映画『スター・ウォーズ』にでてくるあれです。
未来を予知したり、触れずに物を動かしたり、
視覚に頼らず周囲を感知したり、意志を相手と送受信したりする、
あらゆる物質のエネルギー帯の総称です。
詳しくはウィキペディアをググって下さい。
あるいは漫画『ワンピース』で麦わらの主人公が最近身につけた、覇気とかいうやつも似たようなものでしょうか。
うちらはその「フォース」を大真面目に体得しようとしてるんじゃなかろうかと。

えらいもんに手出したなぁ…。

今更ながら、びっくりしたりして。
でも舞台に限らず、
優れた芸術作品ってそういうことのような気がするのです。

しかし、繊細で莫大、言葉ではなかなか説明出来ない概念を「フォース」と表現した、ルーカス、すげえな、やっぱ…。

というわけで我々は、
平成の「ジェダイの騎士」になるべく日々奮闘しているわけであります。

ルーマニア人の「フォース」を感じながら。

岩淵吉能

11/05/24

傾城反魂香/ルーマニア

山の手事情社の風景

山の手事情社の《ルパム》と呼ばれる踊りは、
何度みても面白いと、身内ながらそう思います。
まるで台詞のない物語、飛び出す絵画です。

本番まであと少し、現在稽古場は森下スタジオへと移り、
《ルパム》も細かいところまで合わせております。
役者たちで作った動きをみて
安田さんが動作や感情を誰にどう合わすのか指摘し、
一声、

「ではもう一度お願いします」

ところが、あーしよう、こーしようと、
役者同士で話し合いが勃発していました。
安田さんは黙って様子をうかがいます。
頃合いを見計らう安田さん。
早く話しにケリをつけようとして終わらない役者たち。
安田さんのメガネは舞台をみつめています。

いつ動く、いつ動く、どちらが・・・。

ついに動く安田さん。

「はじめるよ」

声は舞台に響く。
そして、不発。役者たちの話しにケリはつかず。
安田さんは次の機会を狙います。

それぞれが作品をよいものとするため、
話し合うべきことは話し、わかろうとします。
そうしてあーだ、こーだと、役者たちは意見をすり合わせていくのです。
ルパムの精度がよければよほど作品の質もあがるというもの。

ところで黙していた安田さんが動きます。
三度目の正直。

「いくよ」

安田さんの言葉数がだんだんと少なくなっています。
役者たちは一言二言話し、今度は準備につきました。

山の手事情社で見かける光景です。

石原石子