11/05/17

傾城反魂香/ルーマニア

悲鳴

もう5月中旬…。
シビウ国際演劇祭本番まであと2週間となりました。

芝居はどんどん出来ており、
稽古場の雰囲気もピリピリしています。
安田の怒号、俳優のほとばしる汗。
湿度が人の熱気で80%を超えています。(実際の湿度計で観測)

休憩時間には大型扇風機で換気、
それでも足りずにウレタンマットを団扇代わりに熱気を扇ぎ出す。
まさにサウナ状態。
酸素の薄さは高地トレーニング並み。
そんな中で稽古をしております。

山の手事情社の基礎稽古に《二拍子》という稽古があります。
これは簡単に言うと感情(喜怒哀楽)を体で表現する稽古なのですが、
今日は二人一組で相手のポーズを見合い、
体に負荷をかけていく稽古をおこないました。
私は山本芳郎氏と組んだのですが、彼の身体性の高さには本当に驚かされます。
まず、動作にバリエーションがあり、澱みない。
本当は私が彼の動作に負荷をかけていかなくてはならないのですが、
しまいには私が彼の真後ろで真似をしていました。
一つ一つの動作が私の感覚になく、身体が悲鳴を上げている。
直線的な動きしかできない私にとって、
山本氏の動作は大きなヒントとなったように思われ、自主稽古でも実践してみる。
ここでも身体が悲鳴を上げる。
自分の不器用さに本当に呆れてしまう。
20分もやっているとヘトヘトになってしまう。

あと2週間、ここからが正念場。あがいてみせる!

浦 弘毅

11/05/16

傾城反魂香/ルーマニア

ふつふつ

毎日『傾城反魂香』の汗だく稽古に追われています、
山口笑美です。
稽古が終ると歩けません。

この芝居はタイトルに「傾城」とつくだけあって、
廓や遊女達が登場します。

まだキャストが決まる前に遊女の事を調べていたら、
「20代半ばで病気や火事などで亡くなった身寄りのない遊女達は、三ノ輪にある淨閑寺の穴に投げ込むように葬られた。」
ということを知り、
なんと切ない!これは行かねば!
と「投げ込み寺」と呼ばれているその淨閑寺に行ってみました。

お寺の墓地の真ん中に‘新吉原総霊塔’があり、
なんと脇から中が見ることができました。
中には沢山の骨壺が納められていて名前が書かれたものもありました。

遊女達の悲しい生涯を目の当たりにしたような感じがし、
ズドーンと胸にくるものがありました。
「しっかり演じてきます!」
と手を合わせてお寺を後にしました。

その後、キャストが決まって、遊女みやを演じることになり、
沢山の遊女達から「ちゃんと演じてよ!」と言われている気がして
「頑張ります!恥じないようしっかり演じます」
と再び心に誓いました。

しっかし姉さん方、遊女役って難しいっす・・・。

今回演じる事になったみやという役は、親の為に廓に身を売り遊女となり、
絵師の元信と出会い恋に落ち、死んで幽霊となります。

みやは、遊女として悲しみや苦しみなどの感情を抑え、
相当自分を押し殺した日々を過ごしたのでしょう。
抑えていたものが自分でも気付かないうちに巨大化していて、
そんな時にたまたま元信という人に出会ってしまったばっかりに、
みやのなかでそれが爆発して自分でも想像できないパワーになり、
肉体を超えてしまったのだろうなと思います。

幽霊になるってすごいパワーだと思います。
マグマがふつふつしている状態なんですね。

今の私の肉体や精神はみやのそんな状態にはまだまだほど遠いです。

自分を押し殺すどころか昨晩は誘惑に負け夜中にパフェを食べてしまった!!

なんと弱っちい自分・・・
私の中のマグマをためこまねば!!

遊女の姉さん方、見ていてくだしゃんせ。

山口笑美

11/05/13

傾城反魂香/ルーマニア

電車のなかの声の主

某電車内。
イヤホンが音漏れしたかのような低い響きが車内に響く。

「おおあえあいい、あえあえあえあおあ…」

あれ?
今時滑舌を音楽替わりに聴いて、
音漏れしているなんて珍しい状況…。
音のでる方に視線を送る。

「この竹垣に竹たてかけたのは…」

チラと見えるあれは、山の手事情社で配られる滑舌表!
誰だ!? 劇団のワークショップ生?
同じ向きに座っているため顔が確認できない。

しかもテープレコーダーではなく、ブツブツ呟いている。
声が本人の予想を超えて車内に響きわたっていたのだ。
低い声からして、男!?
あれ、今年のワークショップ生に毛の長い男いたかしら?
車内の人々も何事かと、声のする方に視線をおくる。
よく受験生が必死に参考書を開き、
勉強している姿は見かけるが、こんな光景は初めてだ。

正直うるさいので、送られている視線は冷たい。
しかし私は微妙な立場だけに笑いが止まらない。

世の中が試験科目に滑舌表や戯曲を加えたら、
さぞかし車内はうるさくなるだろう。

そして、あんな視線を受けなくてすむのだろうか…。
結局終着するまで、そのサウンドにさらされる事になった。
正体は新劇団員の佐織。

「あ、麻里絵さんっ!」
「お前だったのか…!!」

ルーマニア公演に向けて稽古が進む中、
出演しないメンバーはスタッフ作業など別の仕事に関わる。
自分の稽古時間がなくなるわけで、寸暇を惜しんで稽古していたらしい。
周りの目を気にせず(一般的には迷惑という)打ち込んでる姿はちょっと、羨ましかった。
人は、知らぬ間につまらないもので自分を縛ってしまうから。

私と言えば、思うようにならない身体に辟易する毎日。
何年やってきたんだと自分に呆れ、
しかし、理想は高く少しでも近づけるように現実に目をむけます。

稽古場は今日も汗だくな人達で湿気満載です。

植田麻里絵