10/06/15

オイディプス王

満身創痍

行ってまいりました。ルーマニアとハンガリー。どの国でも上々の評価を得られたと思っています。このように海外で試せるのも日頃日本のお客様の応援があるからだと感謝、感謝です。

今回の作品「オイディプス王」は怪我の多い過酷な作品であることは過去の稽古場日誌でもご承知だと思いますが、今公演も満身創痍でした。首が全く回らなくなった者(約二名)、腰の骨にヒビの入ったもの、指を骨折した者と出演者の半分くらいが重傷だったわけです。
それでも各俳優きっちり本番はこなしているところが凄い!俳優魂を感じます。

私もちょっとした怪我をしてしまいまして、5月27日、出国するその日から「サコツマン」と呼ばれるようになりました。
成田空港で川村(先輩ですが、思い返すだけでイライラするので呼び捨てにします。)、岩淵、文がにやけ顔で「サコツマン大丈夫?」と言ってきます。
声も出すのもやっとだし、吐き気がするし、その状態で20時間も渡航しなくてはならない私にとってはまったく冗談では受け止められない。動かない手でぶっ飛ばしたくなるくらいでした。
なんとな〜く聞き流していると、川村のばか、岩淵のあほったれ、文のくそらが、私のギブスを見て「サコツマンが変身ベルトつけてる〜」とでかい声で笑っている。その横から女優人のクスクス笑い。
「てめーらみんな死んじゃえ!!! 死ななきゃ俺が死んでやる!!」って感じでした。
まぁ〜こうなったのも自分の不注意ではあるのですが、なんとも情けない、恥ずかしい話です。稽古、本番ではアドレナリンが出ているせいなのか、まったく痛みはないのでいつもどおりにこなし(たつもりですが)、4回ものカーテンコールをすることが出来ました。

その次の日は顔面蒼白で廃人のようになっていましたが‥。


浦 弘毅

10/06/15

オイディプス王

ファッキングヤーシュ生ビール

グヤーシュそれはハンガリー名物のスープ。
日本で言うところの要するに味噌汁か。
山の手事情社のハンガリー公演も終り、ハンガリーのお芝居を見終わった夜。
ハンガリーに来たら、グヤーシュは食べたいとガイド本片手にやる気まんまんな文秉泰と腹が減った肉が食いたいビールが飲みたいとこれまたやる気まんまんな
小笠原くみこ。
去年、公演で行ったルーマニアの首都ブカレストで食した史上最悪なカルボナーラに引き続き、ハンガリーのペーチでお昼ごはんに食した史上最悪な中華で腹がいっぱいな俺。
もう何も食べたくないが、ビールだけは飲みたいと、斉木も加わり3人連れ立ってちょっと気になってたお店に入ってみました。

しかし、まったく英語が通じない。
くみこさんがイントネーションがやたらとついた英語を駆使し
「はあんがりああん、どぅらあふとびあー、とぅー」
おばはん、まったくわかっていない。
別テーブルで様子を見ていたパリンカ(ハンガリー名物の蒸留酒)ですっかり出来上がったハンガリー軍団の男子のひとりが助け舟。
ここぞとばかりに
くみこ「はんがあありあん、どぅらああふとびああー、とぅー、はあああんがああありあんどぅららあふと、どぅららああふとびあーるとぅー」
文「ぐやーしゅー、ぐやーしゅ、ぐやーしゅ」

・・・もういいよ。十分通じているから。

調子に乗ったハンガリー男子がひとり増え
ハンガリー男子「ふぁああきぃんぐっどていすとびあー、ふぁっきんぐっどていすとびあー」

それでもやめないふたりは
くみこ「はんがあありあん、どぅらああふとびああー」
文「ぐやーしゅー!ぐやーしゅ!!ぐやーしゅ!!!」
くみこ「あいうおんとぅーみーと、みーと!」

もうどうでもいいや。
斉木「ふぁっきんぐっどていすとびあーぷりーず、ふぁっきんぐうううっどていすすと」

いつのまにか、なんだか知らないが。髭もじゃのおっさんがこれに加わり
ハンガリーのおっさん「かたな」
ジェスチャーで刀を抜くおっさん。

文「わきざし?」
ハンガリーのおっさん「おーおーわーきざーし!」
ハンガリーのおっさんに文の日本語が届き、おっさんさらに調子こきます。
ジャッキー・チェンの映画で見た蟷螂拳のようなカンフーをご満悦で披露するおっさん。

そこまでしてグヤーシュ食べたいか。
そこまで生ビールにこだわるか。
そこまでカンフーを披露したいかおっさん、そしてそれはどうみたってカンフーでジャパン産ではない。
気づくと他のテーブルも完全にくすくす笑い。

そして出てきたのは瓶ビール。
ドラフトビール通じてねぇ。

しかし、山の手事情社の「オイディプス王」はハンガリーの観客の心に届いたと思います。
満員御礼で貴重な体験をさせていただきました。

斉木和洋

10/06/13

オイディプス王

異国にて

渡航中、僕が初めての参加という事もあり、男優の先輩には特にお世話になりました。
そんな想い出を少し。

斉木さんは、ベッドが苦手だという事で、シーツを床に敷いて寝てました。
川村さんは、夜、花火に誘ってくれましたが、その時にはもう終わりかけてました。
山本さんは、ペーチの公演に響くからと、シビウで時計台に登るのを一旦拒否しました。
岩淵さんとは、「こういう所に来ると女の子と歩きたくなるね」と言い合いながら、誰もいないので、シビウで一回、ペーチで二回、二人で手を繋ぎました。
浦さんは、ペーチで大聖堂を見上げて皆が感嘆の声をあげている傍らで、足元に落ちてるインシュロックを見付けて、渡航中一番テンションが上がってました。

そんな感じで、諸先輩方のおかげで渡航ライフを満喫できたわけですが、演劇人としても、フラッと夜一人で飛び込みで芝居を見に行ったりして、非常に充実した時間を過ごしました。

そんな異国、異文化の中で感じたのは、「やっぱり」という事でした。
実際、言語・風習・表現法等、違いはあります。 でも、演劇人としてこだわるべき所、大事にしなければならないモノはやっぱり同じだな、と。
それは今まで自分が立って来た30近い数の舞台でも、今回の山の手での初舞台でも、海外の公演でも国内の公演でも、やるべき事に違いはない、と。
出来ているかいないかの違いだけで。

そしてまた思ったのは、やっぱり日本のお客さんに楽しんでもらいたい、という事でした。
確かに向こうの演劇熱は熱かった。
でも芯の部分を捉えていれば、世界とか日本とか関係なくお客さんを興奮させられるはず、と強く思ったのです。
そんな思いを抱きながら、9月公演に向けて早くも動き出します。
やらなければ。

文秉泰