10/05/28

オイディプス王

シビウ到着です。

演出部の小笠原です。
ここからは、できる限り現地日誌をアップしていこうと思います。

我々一行は、5月27日に成田を出発しました。
飛行機を乗り継ぎ、バスに乗り換え、かれこれ移動時間は24時間以上を経過。
やっと、目的地シビウ市へ到着。
町並みを見た瞬間から、昨年の興奮が一気によみがえりました。

バスで移動中、宿泊するホテルが変更するとか、しないとか。
オーダーしていた美術セットができているとか、今はないとか。
イギリス人の、えらい人?が安田さんと話したいとか、明日話すとか。
別なカンパニーの公演は、完売で見られないとか、でもゴリ押しすれば見られるとか。

一事が万事、こんな感じ。
まあ、でも、昨年このあたりの「お国柄」は学習済み。
それも含めてのシビウ国際演劇祭。

フェスティバルが今日から始まり、街が色めきたっています。
シビウ公演まで、あと2日。
明日は、1日中稽古です。



10/05/24

オイディプス王

演劇のメジャーリーグ

間もなくはじまるシビウ国際演劇祭。
ルーマニアは、日本ではなじみがうすい。
コマネチ? チャウシェスク…ちと古いか…あとドラキュラ?
その、一地方都市に過ぎないシビウだが、
演劇界で言えば、間違いなくメジャーリーグだ。
20年にも満たない歴史しかないのに、
イギリスのエディンバラフェスティバルや、
フランスのアヴィニョンフェスティバルと肩をならべる、
ことによるとそれをこえる評価を得ている。

3年前に観客として見に行って、度肝を抜かれた。
10日ほどの間に20数本の芝居を見たが、
そのうち6本に同じ俳優がほぼ主役で出演していた。
演出家も、タイプも違う芝居なのに。
少なくともそういう俳優が3人はいた。
6本以下ならぞろぞろいた。
1本しか出ていないけれども、すごい!
という俳優もうじゃうじゃいた。
芝居の方も、よくこんなのやるねという
日本じゃ絶対にお客さんが集まらない実験性の高いものから、
げーっと落ち込むくらい深い解釈のもと
原作を忠実に上演した超優等生作品まで、
びっくりするほど幅広かった。

日替わりで別の芝居、しかも本番前には
必ずリハーサルをこなす。
この体力とキャパシティがメジャーと断じるゆえんだ。
その3人が20代と聞いて、さらに驚いた。うますぎる。
案の定、1人はルーマニア国内演劇の
年間主演女優賞を獲得した。
昨年はその女優、オフィリア・ポピーが主役をつとめる舞台「ファウスト」がエディンバラフェスティバルに招待され、大評判になった。
その「ファウスト」、なんと百人近い出演者がいるにもかかわらず、オフィリアはファウスト博士以外のすべての役をやっていた。
まさに彼女の独壇場。
演劇のファンタジスタは、そのように存在する。

すごいことをするやつらの背後には、
必ずうるさい観客がいるものだ。
アメリカの野球だって、ブラジルのサッカーだって、
三度のメシよりそれが好き、という観客が支えている。
客席に座ってそういう演劇狂たちと熱い視線を共有するのも、シビウの魅力の一つだった。
俳優をこんな視線にさらしてみたい。
こんな視線をあび続ければ、うまくならないわけがない。
山の手事情社の舞台も見てくれい。
そんな思いで、昨年「タイタス・アンドロニカス」を持っていった。
キリキリする緊張の中、思わず叫び出してしまいそうな衝動が、客席の自分の内を走る。
どっと疲れたが、久しぶりに生きている気がした90分。
客席は思いもかけない熱狂。
今年もあこがれのラドゥ・スタンカ劇場で上演できることになった。

給料も、いごこちもよい国内リーグを離れて、
海外のリーグに行く野球やサッカーの選手のことが、
給料も、いごこちも悪い日本演劇界に棲む私だが、
今ならばよくわかる。
きびしく、おそろしい、
いい舞台と聞けば、
とるものもとりあえず劇場にかけつける観客に、
自分のプレイを見て興奮してもらうことが、
プレーヤーたる者にとってはなにものにもかえがたい、そのために生きていると言ってもいい、
贅沢な至福のときなのである。

安田雅弘

10/05/23

オイディプス王

日誌

川村を殺すシーンで、川村が予定外にしぶとく絡み付いてなかなか倒れないのでこちらも予定外に膝蹴りを食らわして倒そうとしたらホントに下腹に当たって鈍い音がした。

浦を殺してとどめを刺すところで、浦が稽古前に「俺ちょっと粘りますんで、もう一発下さい」と言うのでその通りにしてあげたらハンマーの柄があばらの間に入りそうになった。

新人の文を殺すところで、文の倒れ方が中途半端だったので、予定外にもう一発食らわそうとしてハンマーを振りかざしたら顎に直撃し、カツッという骨に直撃する音がした。

岩淵を倒すところで、自分の体が前傾しすぎてしまい、回転受け身をする岩淵が下から跳ね上げる脚が俺の鼻先をかすめ、眼球に当たって大怪我をするところだった。

斉木を倒すところで、ハンマーを背中で寸止めにするつもりが床が滑って体ごと斉木にぶつかりそうになり、2?の鉄塊が付いているハンマーなので無理に止めると自分の体が壊れてしまうと思い、仕方なく斉木の背中でブレーキをかけたら重たいものが肉に食い込む感触がした。


山本芳郎