10/05/22

オイディプス王

がんばろう女

昨日の帰りの電車でのこと。
頭が悪いふりをして実は頭のいいんじゃないか
と思われる横山めぐみ似(だと私は思っている)の
若手劇団員、永里子から芝居の進捗について聞かれた。
返答に窮した私は、まだ関係が見えてこないと答えた。

今日は通しであった。

確かにまだ関係が薄い。
そして起こるべきことが起きてこない。

オイディプス王は真実に目をそむけず、
そこにたどりつき、自分の目をつぶす。
妃イオカステは真実を前に死を選ぶ。

女という生き物は、都合の悪い真実を見ないふりをして
生きていくことができるのかもしれない。

しかし、イオカステはオイディプスの破滅を見ることに
耐えられず死に逃げてしまう。

オイディプスは目を潰したものの生き続ける。

なぜ?
現代を生きる自分の中に答えを探す。
古代ギリシャと現代日本が交錯する。

今が一番つらい時期かもしれないが、
ここが俳優という仕事で一番面白い作業でもあるのだ。
がんばろう。

さて、永里子からの
「淳子さんって誰に似てるって言われますか?」
の問いに調子に乗っていろんな人の名前を出して
いたら、電車で向かいに座っていた人から、
「そおかあっ!?」という顔で見られた。

倉品淳子

10/05/21

オイディプス王

髪はおんなの

山の手のオイディプスといえば、髪の毛をひっぱられる芝居である。

いたいけな女子の美しい髪を、運命役の男どもが荒々しく握り、ひっぱる。
おかげでわたくしの貴重な毛髪が、どんどん抜けていくのである。
稽古場を掃き清めると、なんじゃこりゃ!?という量の毛髪が箒にからまっている。おそろしい。

30を過ぎて髪フサフサの川村君が隣にいた。
「岳ちゃん、髪の毛いっぱいあるね。いいな~」
「いや、毛、減りました」
「うそだ。すっごいいっぱいあるよ?」
「見てくださいこの辺、薄くないっすか?」

まったくフッサフサである。

「薄くないよ」
「減ったんですよ!ほんとに!」

意味わからん。

「俺、今、髪の毛減ってきたけど、むかしは大変だったんだなって…」

どうでもいいや。

確かにむかしは髪の毛もっこりしてたよな。
でも今もじゅうぶんもっこりしてるぜ。

私がオイディプスをできなくなるのは、
体がキレないとか、芝居がダメだとか、白ワンピは厳しいとかではなく、毛髪の不足によるのではないかと、密かに恐怖している。

大久保美智子

10/05/21

オイディプス王

気持ちE

オイディプスの稽古場ではこんな言葉が飛び交います。
「じゃあ今から殺戮しま〜す」
「ちょっと◯◯さん殺させてくれる?」
「ここでお前を殴るからな」
「お願いですからこのタイミングで私の腹を蹴って下さい」
「死に方変えました」
「はい、目がつぶれましたぁぁ!」

創作作業は死と誕生の繰り返し。男も女も青アザが徐々に増えていく。

ふと振り返ると山の手の芝居では役柄上よく死んでいた。
観劇した友人に
「今回は生き残ったね」
と言われた事もある。

その時はなんか悔しかった。今回は断末魔をあげられなかった、と。

今回のオイディプスでは男優がバッタバッタと動き回ります。
山本「痛てて…」
浦「ちょっとひねったかも…」
斉木「筋が伸びた…」
俺は見逃さない。苦痛の裏に隠されている恍惚の表情を。
気持ち良いとハッキリ言え!

確かルーマニアの床はなかなか硬かった筈。こりゃ面白くなりそうだ。

川村岳