09/05/13

タイタス/ルーマニア

野球と四畳半

野球は筋書きの無いドラマなんて嘘だね。
9回裏1-0、最後のバッター、カウントは2-3、
ランナー3塁。
可能性は限定されてる。
ヒットを打つ、3塁ランナーが生還する。
ホームランを打つ。
ピッチャー暴投で3塁ランナーが帰ってくる。
三振する。
フライを打ち上げ、野手に取られてゲームセット。
ゴロを打って、1塁でアウト。2塁でアウト。3塁でアウト。ホームでアウト。
限られた選択肢を観客は固唾を飲んで見守る。
ボールが爆発して、キャッチャーが爆死したり、
ピッチャーが奇声を上げてバッターに飛び掛ってきたりしないし、マウンドでピッチャーが急にマグロの解体をしはじめたりも、もちろんしない。

四畳半も、もちろん限られた選択肢の中で見ている人の期待をいい意味で裏切っていかなくちゃいけない
のだけど。
やっちゃうんだよなあ、マグロの解体的な事を。
でも、面白いかも、ダルビッシュがマウンドで奇声を
発しながら、マグロの解体を始めたら。
演劇にはスポーツにはない裏切り、解釈の自由さが
あると思う。
だから演劇は面白い。
当然、こうだろうという常識とか固定観念とか、根本を
疑う視線が現代演劇の骨法でしょ。


斉木和洋

09/05/12

タイタス/ルーマニア

祝・メイン会場で公演!

ルーマニアのシビウ国際演劇祭に参加。
しかも上演する場所がメイン会場のラドゥ・スタンカ劇場に変更になったことで、否が応でも緊張感が高まって
きている野々下です。

今回、日本人の僕らの芝居がルーマニアや世界中から集まってきているお客様にどう映るのか?
一番の関心であり不安はそこです。

そして『タイタス・アンドロニカス』を何故、
今上演するのか?
初演、再演を経てその意味をもう一度考え直さなければなりません。

ただ、不思議なものでどれだけ一人で台本を読んだり資料を調べたりしても考えつかなかったことが、
稽古場で演出や共演者と話しているとするすると湧いて出てきます。
ホントに稽古場は面白い。
第二次世界大戦やテロなど様々な時代の世界情勢について話しているうちにシェイクスピアの台詞から
北朝鮮やアメリカなど現代の世情が読み取れたり、
戦後の貧しい日本で馬車馬のように頑張って働いて
いくうちに、いつの間にか家族との溝ができてしまった
団塊の世代の父親のことなどが観て取れて
しまうのです。

言葉の数や、シーンの多さという意味ではなく、
読み取れてしまう情報という意味で、芝居には多くの
情報が詰まっているんですねえ。

そしていい芝居は人間の想像力を引き出してしまう。
見る人の主観でまったく違う物語ができて
しまうんです。
それはきっと世界共通でしょう。

ということで、この『タイタス・アンドロニカス』が様々な
国のお客様の想像力を引き出す芝居になるよう、
これからもバリバリ稽古したいと思います。


野々下 孝

09/05/11

タイタス/ルーマニア

inモワッ

稽古場日誌を書くとき、モワッ、大抵季節の事からかき始めているきがするモワッモワッ。
変えようと考えていたのだが伝えずにはいられない。
この暑さ。ここ2,3日夏日である。
モワッモワッモワッ・・・。
30度近くに上がった稽古場でクーラーなし
(暖房機能から切り替えていないため)
これ以上にモワッとすることはない。
この状況にモワッと言う言葉、これ以上にピタッと来る言葉はない。

我が稽古場(作業スペースなどもある関係で狭く)
いるだけでモワッとする。・・・ただいるだけなのに。
1シーンの稽古が終わった後、すぐに窓を明け換気。
事足りず、道成寺で桜を降らせるための業務用扇風機でさらに換気。時には正方形の青いスポンジのマット(大座布団ぐらいのサイズ)で仰ぎ、手動式換気。
稽古の内容は緊張感満載なのに、換気の瞬間はそれもあってか皆ここぞとばかり換気に参加。
廊下の方に流れていったモワッを、安田さんも自ら
退治している。
ちょっとおもしろい。青いマットでおのおのモワッと
空気を仰いでいる姿は、オランダの風車みたいだ。
とのどかなことを思っているのは私だけか・・・。

外の空気を吸いに行くもの、外に出てしまうともう一度
モワッな空気になれないといけないことを見込んで
残るもの、様々。
『タイタス・アンドロニカス』。
私のやるべきこともまだモワッとしている。
表現にしていく作業の面白さ、身体が言うことを
利かない大変さ、頭の中の混沌としたかんじ。
透き通った爽やかな風が流がながれてくるのを
楽しみにしつつ。
今日もモワッとした稽古場に足を運びます。


植田麻里絵