08/07/14
実食中
私にとって、『ロミオとジュリエット』って、実はあまり好きな作品ではありませんでした。というか、食わず嫌いでした。
子供の頃から知っている作品でしたが、大人になるまでちゃんと読んだことがなかったんです。
知っていたのは、2人の恋の結末と、
「おおロミオ。どうしてあなたはロミオなの?」という台詞だけ。
ちゃんとストーリーを知ったのも、レオナルド・ディカプリオ、クレア・デインズが主演の映画を観た時がはじめてでした。
でも映画を観てからも、なんとな〜く食わず嫌いの感じはそのままでした。レンタルビデオで借りて、初めて映画を観たときも、なんとな〜く観ただけだったような気がします。
あまり作品を深く知ろうとは思えなかったんです。
そこで、どうしてそんなに食わず嫌いだったのか考えてみることにしました。
まず、恋愛物語ということ自体が、私にとって食わず嫌い分野だと思うんです。
「こんな恋がしてみたい。でも絶対ありえない。だから憧れる。」
なんだか恋愛ものって、観客のそんな欲望を満たす為の作品って気がしてしまっていて、な〜んか嫌だったんですよね。
日常生活での恋愛がつまんないから、テレビドラマで「ありえない恋愛」を仮想体験して楽しむ、っていう感覚と同じような感じがして、なんだか、「お気軽、お手軽」に求めてる感じがしてしまって、安易な感じがして嫌だったのかもしれません。
別にテレビドラマがダメだっていうわけじゃないですよ(笑)
あくまで私の中のロミジュリ観の分析です。
そして、有名なバルコニーのシーンのジュリエットの台詞。「おお、ロミオ。どうしてあなたはロミオなの?」
これが、とても嘘っぽく感じていたんです。
だって、普段自分たちの日常生活の中で、たとえ恋愛をしても、こんなこと絶対言わないじゃないですか。
初めて会った人を好きになって、それが好きになってはいけない立場の人ってことはまずないし、
あったとしても、「どうして○○さんなのっ!?」って言うくらい好きになっちゃう、なんてことも滅多にないと思うんです。
どうしても、「そんなことあるわけないじゃん!」ってつっこみをいれたくなっちゃうんですね。ひねくれものですねー。
でも、つっこみ、いれたくなりませんか?(笑)
と、いろいろ言ってはみたものの、
「絶対あり得ない、けどこんなことあったらいいな」っていう感覚は、なんだかんだいっても私の中にもあるんですよねぇ。
いや、きっと皆あると思うんです。
そして実は、多かれ少なかれ、「絶対ありえない」ってところを楽しんでいると思うんです。
だけど、それが現実逃避してるように感じて嫌だったのかしら。
でも、「現実じゃ絶対にあり得ないからこそ、おもしろい」ってこともあるんですよね。
一目ぼれした相手が、敵同士だった。
結婚した当日に、妻のいとこをケンカで殺してしまった。
二人の恋を貫くために、親も家もすてて、仮死状態になる薬をのまなきゃいけない。
「普通じゃ絶対そんなことあり得ない!」
その、「普通じゃあり得ない」という所を、もっと純粋に楽しんでもいいんじゃない?
「現実じゃ絶対あり得ないから」と言って、引いて観ちゃわずに、もっとどっぷりつかっちゃってもいいんじゃない?
『ロミオとジュリエット』って演劇なんだし、もともと「何でもアリ」なんじゃない?
だいたい、演劇なんてフィクションなんだしー。普通じゃきっとつまんないしー。だから演劇っておもしろいんだしー。
ロミジュリについて考えたら、演劇のおもしろさ再発見!? 今更っ?!
子供の頃、食わず嫌いだったものを大人になって食べてみたら、意外とおいしかった。
思っていた味とちょっと違ったかも。
もっとよく噛んで味わってみたいかも。
私にとって『ロミオとジュリエット』ってそんな感じかも。
日々の稽古の中で、そんなことを思っている谷口でした。
山の手の『ロミオとジュリエット』は、
あなたの思っている『ロミオとジュリエット』と
もしかしたらちょっと違った味になっているかもしれません♪
谷口葉子