08/08/21
普通じゃない
今公演はお休みを頂いている野々下です。
5月25日の『摂州合邦辻』本番以来、
久しぶりに稽古場見学に行ってきました。
若手メンバーとは会って話す機会がありましたので、
稽古の進行状況は聞いていましたが
「どんな新作なんだろ?」
と観る前は色々想像しましたし
「まったく理解できなかったらどうしよ」
とか
「まったく理解できてないのに感想を聞かれたらどうしよう」とか・・・
ちょっと心配になっていました。
もしかしてこれがお客さんの気持ちなのでしょうか?
でも実際観てしまえばなんてことはありません、
頭でそんなに考えなくたってそこは“体験型”演劇ですから、
出席して今そこで行われていることに立ち会うって感じで、色々な感覚を掻き回されちゃえば良いんだと思います。
以前稽古場で発表されたショートシーンに、
6畳程の真っ暗な部屋に20人ぐらいのお客さん役の劇団員を押し込めて行われたものがありました。
あまりの暑さに朦朧としながら役者の登場を待っていると、扇風機や掃除機、電動式のこぎりの音が突然鳴り響き、更にライトがついたり消えたりする中、びしょ濡れの役者が激怒しながら何かわけのわからないことを喚きつつ入ってきて・・・
さらにめちゃくちゃ怒っている役者がもう一人入ってきて・・・去っていく。
というものでした。
また、
広さが体育館ぐらいあるスタジオの天井からただただ床に粉、雑誌、新聞、洋服、紙袋、ゴミ袋、ヘアースプレー、塗料、などをどんどこ落としていく・・・。
ただそれだけ。
というものもありましたし、
薄暗い中お客さんは全員適度な距離を保って立っていて、そこにバタバタと床が鳴り響き、何かと思ったらまるで陸に打ち上げられた魚のようにピチピチと役者が床を跳ねてきて、餌に寄ってくる池の鯉のようにお客さんの足元に寄ってくるというような気持の悪いものもありましたし、
「準備ができました」と呼ばれて男子トイレのドアを開けてみると小便器の上や大便器の前でそれぞれ芝居をしている役者達。
ある女優は大便器の前に正座をして待っており、入ってきたお客さんにお茶とお菓子をふるまい、ある女優は小便器の中に置いたこけしを見るようにうながす、そしてある女優は(女優陣が嬉々として演じていましたねぇ)大便器の前でなぜかバナナのたたき売りよろしく通り過ぎようとするお客さんに威勢よく呼びかける・・・
というようなものまでありました・・・。
「なんじゃそれ!」
ご意見ごもっとも。
ただ真面目なんです。新しい演劇を作るってことに。
真剣なんです。お客様との新たな関係作りに。
額縁舞台の前でふかふかの椅子に腰かけて観る演劇ではすることの出来ない体験が出来るように、相変わらずメンバーは普通じゃない情熱を燃やしているようです。
なんだか山の手事情社内では「普通」って悪い意味で使われるんですよね。
演技にダメ出しが入り、説明を求めると「だってそれ普通じゃん」とか、演技途中に「ふつ〜〜〜(なぜか甲高い声で)」とか突っ込まれたり、演技をし終わった後に「これ普通かなあ」と心配そうに周りの役者に尋ねてみたり、そんな使われ方をしちゃう「普通」。
「今までの公演も十分普通じゃないよ」
というお客様の優しい言葉も耳に入らないくらい、普通じゃないことに普通じゃない情熱を燃やす劇団山の手事情社!
その集団が創る『YAMANOTE ROMEO and JULIET』!
本番はハンパなく普通じゃないだろうと僕も期待してます!!
野々下 孝