稽古場日誌

methods&過妄女 谷 洋介 2019/05/14

相も変わらず

今までに一度だけ、女性を待ち伏せしたことがある。
その女性は、僕が中学生のときに教育実習でやってきた先生だ。

永作博美似のとにかくきれいでかわいらしい先生だった。
仲良くなり、先生の自宅は自分の家の近くだったことがわかった。
ある時、下校間際に先生に声をかけたら、冗談交じりに「一緒に帰る?」なんて言われたような言われなかったような。
それくらい仲良くなり、教育実習の終わりには、僕は感謝の気持ちを込めた手紙を渡した気がする。

実習期間が終わり、先生が学校に来なくなって数週間後、なんだか僕は会いたくなってしまった。一人だと心細いので友達に同行してもらい、先生の自宅付近で帰宅してくるのを待ち伏せした。今だったら完全にストーカー行為。当時はまだストーカーという言葉はなかった。
しかし待てど先生は来なかった。友達は付き合いきれず、帰っていった。
あきらめて帰ろうかと思ったそのとき、先生はやって来た。

僕の心臓は一気に沸点に到達。

気持ち悪っ! と言われてもおかしくない僕の待ち伏せに対して、先生は、
「麦茶でも飲んでく?」
と笑顔で声をかけてくれた。
このドラマのような展開に、僕はあわあわしてしまい、逃げるように帰ったことを覚えている。
今思うと、なんで麦茶飲まなかったー!! と思う。

そんな僕の教育実習の先生に対する行為は、担任に筒抜けだったのであろう。
それからしばらく、担任には「お前、むっつりだな」といじられるハメになる。
そんなこと人から言われたことがなかったので、それはとてもショックだった。

しかし、もし今、あの先生に会うことができたら、声を大にして言いたい。

「僕は相も変わらず“むっつり”です!!」

と。

そうそう、次元は違うが『かもめ』のトレープレフ青年も、恋するニーナに対して僕と同じような付きまとう行為をしている。

トレープレフ君、僕はなんとなくわかるよその気持ち。

谷 洋介

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劇団山の手事情社 創立35周年記念公演
『methods』2019年6月21日(金)~24日(月)
『過妄女』2019年6月26日(水)~30日(日)
会場=下北沢 ザ・スズナリ

詳細は こちら をご覧ください。

『methods』&『過妄女』

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