稽古場日誌

ワークショップ 田中 信介 2015/09/04

学生のための演劇サマースクール リポート

8月24~26日の3日間「学生のための演劇サマースクール」が開催されました。
今回で3度目になる様々な大学、専門学校、高校生を対象とした大型ワークショップには21名のやる気溢れる若者が集い稽古場を熱くさせていました。
ミニゲームやストレッチ、マッサージで身体をほぐした後、山の手事情社の劇団員・研修生が普段稽古で用いる《山の手メソッド》の一部を体験。

瞬間的に喜怒哀楽といった感情を表現するポーズを作る《二拍子》、一定のルールのもとに歩き自分のくせを見つめる《歩行》等の身体訓練に始まり、一定のルールや設定に基づいたゲーム的な即興芝居の稽古《フリーエチュード》、最後には3~5名のチームに分かれて5分ほどの寸劇《ショートストーリーズ》を1、2時間程で作り発表してもらいました。

普段芝居の稽古といったらとりあえず”台本を読む”という環境にしか無かった学生が多く、舞台に自らの身体のみで飛び込む、身体から感情を生み出す、自分たちで1から物語を作り出すといった稽古の一つ一つが新鮮な驚きの連続であった様子。
未経験の稽古で失敗する、恥をかくのが怖いのか、はじめはおっかなびっくりだった学生達も担当の劇団員に弄られ煽られ少しずつ調子に乗り出し、今まで出したことがないであろう表情、声、身体に変わっていきました。《ショートストーリーズ》作成では、リーダーシップを発揮し創作作業をまとめる人、アイディアを無責任にでもたくさん提出する人、それを膨らませる人と様々。
短い期間ではありましたがエネルギッシュにそれぞれの個性、長所、短所を見せつけあった彼らは旧知の同級生のように打ち解けて見えました。

未経験のゾーンに足を踏み入れていくことは誰だって恐ろしいものです。しかし先ずは身体ごと飛び込んで大失敗しなければ今の自分に足りないもの、やらなければいけないものも見えてきません。
漫画やドラマ、アニメの登場人物の真似やなんとなくのイメージだけでキャラクターを作りあげることは本来の演劇の姿ではありません。普段日常で生きている自分だって周りの環境に複雑に影響され色んなことを考え、繊細で多様な痛み、悩み、喜び、変態性を絶対に持っているはずです。そして舞台上の登場人物は本来の自分と同じかそれ以上の繊細さを持って存在しています。
先ずは自分がどんな人間なのか、どんな生理感覚を持っているのかを稽古場で頭でっかちに考える間も無くいっぱいいっぱいになる作業が役者には必要不可欠です。
そうして初めて自分以外の人間を演じるという難しさと神聖さが見えてきます。

今回の体験がその果てしない、だが何物にも代え難い人間研究の手がかりになれば幸いです。

田中信介

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