稽古場日誌
馬込文士村演劇祭/馬込文士村 空想演劇祭 安部 みはる 2024/09/28
『ガリバー旅行記』稽古中です。
今回は『小びとの国のガリバー』のみを上演します。
これが結構難しい。
まず、大きな人と小さな人をどうするのか。
急に異国に流れ着いた人はどうなるのか……。
ほとんど何もない裸舞台で、あらゆる人とものを行ったり来たりしながら演じ分け、アイデンティティが揺らぎまくるメンバーたち。
私は誰? ここはどこ? 今何時?
果たして世界観が伝わるだろうか。
演劇はナマモノなので、CGもなければ場所の移動もできない。
どうするか。
「想像力」をフル稼働する。そして強く信じる。
もちろん作り手である私たちもそうだが、見ているお客様も「想像力」をフル稼働することになる。
お芝居を見ていて、何もないところに潮の香りや小人の声、土煙、ご飯の味……が立ち上がる。
わかるような気がする! 「気がする」が非常に大事。
そんなふうに、身体感覚を演者とお客様が共有できたら最高のお芝居になるはずだ。
私たちは一歩も動かなくても「想像力」でどこにでも行ける。
お芝居の前に行うワークショップもその助けになるはずだ。
さて、カリバーはわりと酷い目にあってもひょいひょい旅に出る。
小人の国に流れつき兵器として戦争に利用され、裏切られそうになって逃げ出し、大人国へ行き、見せ物としてこき使われたり、ラピュタ(空飛ぶ島)に行き音楽と科学にしか興味のない人々にうんざりし、不老不死の国に行き恐ろしくなり、知性を持った馬の国に行き人間が家畜のように使われているのを見て、完全に心を打ちのめされて帰ってくる。
旅は人を成長させる。
旅先で出会う人が写し鏡となって自分をうつし出すからだ。
マンガ『ミステリという勿れ』で天達先生がこんなことを言っている。
「人に会い、人を知りなさい。それは自分を知る旅だよ」
ガリバーの旅行はまさに自分に出会う旅でもある。
人生の荒波を乗り越えまくってきた大きい人にも、これから挑んでいく小さい人たちにも、ぜひ見ていただきたい名作なのである。
安部みはる
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OTA アート・プロジェクト
馬込文士村演劇祭2024
~ものがたりの世界を楽しもう~
演劇上演『ガリバー旅行記』『ヘンゼルとグレーテル』
日時=2024年10月5日(土)・6日(日)
会場=山王ヒルズホール
詳細は こちら をご覧ください。