稽古場日誌
あっという間に2025年が明けてしまいました。
疲労困憊の年始を送る、安部です。
昨年11月から『オセロー』の稽古をスタートし、話し合いを重ねながら少しずつ組み立てていっています。
『オセロー』は言わずと知れたシェイクスピア四大悲劇です。
部下の裏切り、不倫疑惑、お酒による失態、ついついついた嘘、納得のいかない人事、果ては愛する妻の殺害、罪を悔いた夫の自殺……。
シェイクスピアの作品の中でも非常に完成度の高い作品とされています。
悲劇とは。
「主人公が運命や社会の圧力、人間関係などによって困難な状況や立場に追い込まれ、不幸な結末に至る劇」(デジタル大辞泉参照)。
ネットが普及して世界で起こっていることを手のひらサイズの画面から覗くことができる昨今、シェイクスピアのお芝居に描かれているような悲劇はとても身近なものです。
『オセロー』の面白いところは、登場人物の二面性です。
地位や名誉があり、一見リア充と思われる黒人の将軍オセローやその妻デズデモーナ、オセローに副官に抜擢されたキャシオー、土地持ちのロダリーゴー。彼らは心の中に「劣等感」を抱えています。
もしかすると本人たちも気づいていないことかもしれません。
彼らを悲劇の渦に巻き込んでいくイアーゴーは身分が低く、自分の能力が正当に評価されていないことに不満を感じています。
イアーゴーは非常に観察力の鋭い人物です。他人の抱えている「劣等感」を的確にとらえ、自分の目的のために利用するのです。
一番友達になりたくない人ですね。
かくいう私も「劣等感」の塊です。
もう少し小柄に可愛く生まれたかったな〜
セクシーだったらよかったな〜
頭が良かったら外国の大学に行けたな〜
面白い話ができたらお笑い芸人になれたな〜
ヨーロッパの人みたいに彫りが深かったらな〜
運動神経がよかったらオリンピック出られたな〜
イアーゴーにつけいられる隙だらけではありませんか。
あなたにも思い当たるところがあるでしょう。
登場人物たちはイアーゴーによって可視化された自分の中の「劣等感」という化け物に食われてしまうのです。
恐ろしや。
そんな人間の心理をここまで鮮やかに描き出すなんて、シェイクスピア、やりおるわ。
他人を羨むのもほどほどにってことですね。
蛇足ですが、「劣等感」と「夢」は裏と表です。「劣等感」の克服を夢や目標として掲げ、人生のモチベーションを上げることもできるんです。
裏と表……ボードゲームの「オセロ」をやる時、ぜひシェイクスピアを思い出してください。
スターがいなくても、派手なパフォーマンスをしなくても、他のカンパニーと比べず一歩一歩独自の作品作りを続けて、劇団 山の手事情社は40周年です。
『オセロー』『マクベス』も他と比べず我が道を行き、お客様に喜んでいただけるお芝居にしようと思います。
ぜひ、両方の作品をご覧ください。
どうぞ、お楽しみに!
安部みはる
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劇団 山の手事情社 二本立て公演
『オセロー』『マクベス』
日時=2025年2月21日(金)~25日(火)
会場=シアター風姿花伝
詳細は こちら をご覧ください。