稽古場日誌
タイタス・アンドロニカス/女殺油地獄 山本 芳郎 2015/11/01
演劇は世の中に対し何の役にも立たない。
どんなに残虐な行為や争いを描いた作品を作って社会に訴えても、いま世界中で起きている残虐な事件、テロや戦争をやめさせることは出来ない。
本気で社会を変えたり貢献しようとするなら、政治家になるなり、デモへの参加や被災者の救済やボランティア活動をする方がよほどマシだと思う。
演劇はそういう「熱狂」とは逆だ。
むしろ、社会をなんとかしたいというような立ち位置から離れたところで、人間の所業を静かに冷めた視線で見詰める。
あるいは、ニヒルに嘲笑う。
一方引いたところで皮肉と笑いでもって突き放す…
そんな知性がときには人間に必要だということを教える。
熱狂はいずれ狂気に変わることもあるからだ。
世の中の役に立とうとしないということが、演劇が世の中に必要な理由なのだと思う。
ほとんどの悲劇はそういうものだと思う。
なかでも「タイタス・アンドロニカス」はとくに、そういったことがよく感じられる作品じゃないかな。
ぜひご覧下さい。
山本芳郎
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『タイタス・アンドロニカス』『女殺油地獄』公演情報
https://www.yamanote-j.org/performance/7207.html