稽古場日誌
7月23日から3日間、宮城県にて高校生を対象としたワークショップを行ってきました。
宮城県の高校の演劇部員が各校数名ずつ集まり研修する、という企画です。昨年も山の手事情社のメンバーが講師として招かれまして、好評だったとのことで、今年も伺うことになりました。僕は初参戦です。今年は73名の演劇部員が集まりました。
このワークショップは、午前中に全体で筋トレや発声、《山の手メソッド》を用いたエチュード(即興的な稽古)をし、午後はグループにわかれて《ショートストーリーズ》(台本を用いず、身近な出来事を寸劇にする。以下《SS》)を作ります。 最終日には、各グループで創作した《SS》を発表します。
面白いのは、各グループに専用の部屋が割り当てられ、そこが発表会場にもなる、というところです。ということは、各会場を巡回して観劇することになるので、動物園を観て回るような感覚で楽しめます。
今年は、去年より一段と面白い作品が出てきたようで、引率の先生方も興奮してらっしゃる様子でした。
僕は、高校生対象の演劇ワークショプが初めてだったので、今どきの高校生ってどうなんだろう!? とワクワクしながら参加したところ、第一印象は、あれ? 大人しいなあ、と感じました。まあでも、僕が高校生のときも演劇部って大人しい印象でしたから、こんな感じなのかな、と思いました。
しかし、講師である僕たちが少しだけ稽古の見本を見せたところ、意外なほど調子にのってギャーギャー喜んでました。演劇部員がいつも狂うほどギャーギャー言ってたら、演劇部だけにとどまらず、学校全体の印象が変わるだろうな~って思うくらい、その後もはしゃいでました。
変わろう、日本の高校演劇!
さてさて、話は発表へ向けての《SS》作りに移ります。
僕の担当したグループは2作品作ることになりました。その内の1作品で、ある男子生徒に、性格の悪いかなり最低な男子を演じさせたところ、“気持ちがとにかくしんどい、こんなイヤな奴できない”と本音を吐いたのです。とても優しいヤツだったのです。
でも、演技なんて決して楽しいものではないと僕は思っています。やってて楽しい演技に魅力がないとは言い切れませんが、役者がしんどいから、きつい思いをしてるから演技がドラマティックになるんだと思います。
しばらくするとその男子生徒は「顔洗ってきます!」と言って部屋を出ていき、戻ってきて「やります」と続投してくれました。すると何か吹っ切れたのか、ガラッと演技が変わったのを僕は感じました 。
そのとき僕は、純粋なひとりの高校生を、演劇サイドに引きずり込んでしまったような感じがし、なんだか申し訳ないという気持ちと同時に、内心はニヤニヤしてしまったのです。
これが今回のワークショップで一番印象的だった出来事であり、ワークショップの楽しみをひとつ発見してしまった、よい経験でした。
谷 洋介