稽古場日誌

ワークショップ外部活動 武藤 知佳 2016/11/16

シニアのための俳優講座 『はじめの一歩』 リポート

 俳優部の倉品淳子が講師を務める、公益財団法人相模原市民文化財団の主催による、シニアのための俳優講座。60歳以上の女性限定の講座で、今年度は講座Ⅰ「はじめの一歩」と、講座Ⅱ「物語のちから」の2つの講座があります。
今回私は、講座Ⅰ「はじめの一歩」のアシスタントとして、参加させていただきました。

 どんな方々が集まってくるのだろうか、どんな稽古になるのだろうか… ドキドキ、ワクワクして迎えた初日。はじめは自己紹介や準備運動から入り、少し緊張も解けてきた頃、講師の倉品の指示で《山の手メソッド》のひとつ《二拍子》を行うことになりました。《二拍子》とは、喜怒哀楽といった感情を表すポーズを瞬間的に作る稽古で、日常生活の中では滅多にお目にかけることがないユニークな身体と表情になってしまう稽古です。“演劇をやるのは全く初めて”という方もいる中で、大丈夫だろうか… と少し心配な気持ちになりましたが、今回の参加者の方々、見事にその心配を裏切ってくださいました。倉品の手拍子を合図に一瞬でテーマに沿った身体をつくるのですが、いざ前に立つと、集中し、ポーズを作っていきます。2つのグループに分かれて順番に行ったのですが、見ているグループからは笑い声があがっていました。

 このような調子で、《ショート・ストーリーズ》(日常の出来事を元にした寸劇)、《ルパム》(日常的な動きなどをもとに創作するダンス)、《漫才》(テーマに基づき、日常の出来事を感情豊かに語る)など《山の手メソッド》を使った課題が毎稽古行われ、その度に参加者の方々の色々な面が露わになったり、これまで重ねてきた人生の片鱗が見えたりと、とても刺激的な時間でした。基本的に笑いが絶えない稽古場でしたが、時に《ショート・ストーリーズ》などでは、悲しみや怒り、言葉にできない様々な感情が見え隠れする作品もあり、その情景に引き込まれ、みんなが静まり返ることも。興味深いシーンがたくさん出来上がっていきました。

 全6回の講座の中で、5回目の講座で本番に使われる題材が発表され、その日と発表会当日の朝の練習は怒涛のような速さで進んでいきます。集中した稽古が行われ、それぞれのシーンがだんだんと詰まっていきます。本番前の稽古の最後の15分間で、本番にのせることが決まったシーンもありました。

 そして迎えた発表会。倉品が付けた作品名は「進め! オダサガジョ」。第一部は30分ほどの構成演劇で、第二部は参加者の方々が持ち寄った詩や本の一部などの文章から創作したシーンと《ショート・ストーリーズ》を発表しました。参加者の方々から出てきた題材を使って出来上がった舞台。一人ひとりがそれぞれに独自の魅力を放つ作品になったと思います。

 終了後、感想などを話す時間が設けられたのですが、その時のみなさまのお顔がなんとも清々しくすてきな表情をされていました。

 今回の講座が参加者のみなさまにとって、何らかの「はじめの一歩」になったのではないか… そんな気持ちになり、このような時間を共有させていただけたことに、とてもうれしい気持ちになりました。

 参加者のみなさま、本当にお疲れ様でした。またお会いできますことを楽しみにしています。

武藤知佳

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