稽古場日誌

オイディプス@Tokyo 武藤 知佳 2017/01/05

自身に潜む“神託”

作中「父を殺し、母と交わり子をなす」とオイディプスが授けられる神託は、ただの神話なのだろうか。現代の私たちも実は依然として強固な神託に縛られているのではないか。劇団員が自分にとっての神託を語ります。
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「それって、あなたの事情で、私には関係なくない?」
最近、何気なく送ったLINEに対して、友人に言われました。

「そんなつもりじゃなかったんだよー」と言い訳しながらも、自分の心によーく耳を澄ましてみると片隅できこえていた気がします。
「ME、なんかちがうんじゃないの~!?」
そんなつもりはなかったはずなのに、ものすごく自己嫌悪に陥りました。一晩にして体調を崩しました。

私は思い切りがよい人間ではありません。
かつて「あなたは“石橋を叩いて渡る”を通り越して“石橋を叩き割る”タイプだね」と言われたこともあります。
自分でも普段は割と慎重なタイプだと思っています。
でもふと立ち止まって今の自分の状況を考えてみると、時間やプレッシャーや人と比べてしまう心や負けず嫌いな気持ちやいろんなものに追い立てられ、なおざりになっていたかもしれないと思いました。

友人もそんな私のことを察知したのかもしれません。

物事を進める時には勢いが必要です。
でも時として、心の声に耳を傾けずにエンジンをふかしてしまうと、思ってもみない人を傷つけていたりします。
そしてそれに気がつかなかったりもします。
今回も友人が言ってくれなければ、「ME、なんかちがうんじゃないの~!?」という心の声は聞き流してしまっていた気がします。

自由でありたいと願いながら、日々いろいろなものに縛られている自分がいます。
ひとつから解放されても、また次のものに絡め取られていたりもします。

今、生きている場所で少しでも楽に過ごせるように、
「こうすることがよいことなのだ」
「これが正義なのだ」
といいきかせている自分がいます。
でもそんな自分に無自覚だったりもします。
知らず知らずのうちに、人に自分の“正義”を押しつけていることも、きっとたくさんあるのだと思います。

「あぁ、こういうのを“神託”っていうのかなぁ」
以前の自分よりいろいろ自由になった気がしていたけれど、やっぱり私は“神託”まみれの人間なのだと思います。

自身の“神託”と戦えるのは自分自身でしかありません。
気がつくきっかけをもらった以上、自身に潜む“神託”に対峙していけたらと思います。

武藤知佳

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若手公演「オイディプス@Tokyo」
2017年2月23日(木)~26日(日)
すみだパークスタジオ倉
公演情報はこちら

Oedipus@Tokyo

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