稽古場日誌
オイディプス@Tokyo 山本 芳郎 2017/01/18
作中「父を殺し、母と交わり子をなす」とオイディプスが授けられる神託は、ただの神話なのだろうか。現代の私たちも実は依然として強固な神託に縛られているのではないか。劇団員が自分にとっての神託を語ります。
***********************************************************************
中学生のころのこと。
学校の先生に、将来でかい人間になると言われたことがある。
あれは神託だったのか?
当時、授業で使う僕のノートは周りから珍しがられていた。
なぜなら字があまりに奔放すぎるからということらしい。
僕は大学ノートの罫線にそって字を書けない。
7ミリとか8ミリくらいの罫線があっても、最小でも一文字は罫線三段にまたがって2センチくらいの大きい字を書いてしまう。
気をつけないとさらに3センチくらいのでかい字。
しかも罫線の平行を完全に無視し、斜めに書き進んでいく。
だから、そもそも大学ノートである意味がなく、初めから無地のノートでいい状態になっていた。
速記録のような、わけのわからない字。
今でも自分の書いた字をあとで読み返せないことが多い。
そもそも僕は授業中ノートをほとんど取らない子だった。
周りのみんなはカリカリと、一言一句先生の言葉を逃さないくらいの勢いでノートに書き込む。
色ペンを使ってみたりして、まるで参考書のようにきれいにまとめている。
ところが僕はボーっと黒板を見ている。
たまに暴力的にちょっとメモするだけ。
もともとあまのじゃくな性格ではあるのだけど、別に不真面目なことをしてたつもりはない。
みんなよくやるなあと思いながらも内心、
「でもいちいちノート取らなくたって全部教科書に書いてるし、自分のノートにまとめなくたって参考書を見ればまとまっているし、いま先生がしゃべってるんだから、聞いてりゃいいじゃん」
くらいに思っていた。
そんな僕の態度が不思議だったのか、僕の激しいノートの字を見て、ある先生が、
「大きい字を書く人間は、将来でかい人間になるぞ」
と言ってくれた。
ふーんと思いながらも、ちょっとうれしかった気がするけど、ご存知の通りその神託はいまだ実現していない。
山本芳郎
***********************************************************************
若手公演「オイディプス@Tokyo」
2017年2月23日(木)~26日(日)
すみだパークスタジオ倉
公演情報はこちら