稽古場日誌

Anniversary 武藤 知佳 2017/03/08

失恋記念日

私は泣き虫だ。

しかし、おそらく滅多に外では泣かない。
中学生の時通っていた塾の先生には、「お前は俺が本気で怒鳴っても泣かなそうだな」と言われていた。

そう、とにかく家泣き専門。

幼い頃ならともかく、年ごろになってからも、家では人目をはばからず泣き出す娘に親も最初は心配していたようだが、そのうち放っておかれるようになった。
家泣きの理由は至って幼稚でシンプル。
「物事が自分の思うようにならずに辛い」から。

なかでも1番泣いたのは、ある失恋をした時だと思う。
いったい何リットル泣いたのかと思うくらい、何日も、何日も、泣いた。
同じ頃に小学校の時から一緒に過ごした愛犬が亡くなったことも重なって、「ほんと、おまえ、大丈夫か!?」と思うくらい泣いた。
幸い、泣いても泣いても、涙が涸れることはなかったが、そこから動き出したことがいろいろあった気がする。

今まで信じていたこととか、当たり前だと思っていたことに疑いの目を向けてみたり。
これまでの自分の人生ってなんだったんだろうと思ってみたり。
自分が本当に望んでいることは何なのだろうかと考えてみたり。
「失恋」が人生を変えたのかと思うと、なんだか癪ではあるが、「これって私の記念日だったの?」と思ったりもする。
少なくとも当時の私は、自分にくっついていたいろいろなものが叩き割られ、変形を余儀なくされていた。

ところで、今年度の研修生公演「Anniversary」、本番に向けての稽古が本格化している研修生たち。
きっといろいろなものが叩かれ、割られ、変形しようともがいていたり、変形してなるものかと踏ん張っていたり、無自覚に変形していたり、そんな毎日を過ごしているのではないだろうか。
1年の集大成であろうこの舞台で、8人がどんな“形”をしているのか、とても楽しみにしている。

さて、一方私の人生は、恋愛に臆病にならずに、どんどん当たって砕けたら、それだけよりよい人生が歩めるかもしれない!!なんて考えてみたりする。
……いや、いや、いや、いや、待てよ、私。冷静になりなさいよ。
できることなら、「幸せになりたい」という気持ちは忘れないで生きていきたいと思います。

武藤知佳

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2016年度研修プログラム修了公演「Anniversary」
日程:2017年3月23日(木)~26日
会場:シアターノルン
詳細はこちら

2017年度研修プログラム「俳優になるための年間ワークショップ」
オーディション開催中
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■年間ワークショップ参加者体験談
■年間ワークショップカリキュラム

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