稽古場日誌

Anniversary 鹿沼 玲奈 2017/03/12

その日をつかみに行く

何かが「よきようになる」日が、一般的には記念日と言われるのではないでしょうか。
生まれる、出来る、変わる、感謝をする。いろいろありますが。
しかし、山の手事情社の研修生として1年過ごした彼らは、いま、青白い顔でこう言うのではないでしょうか。

「演劇活動において、なにかがよきようになる瞬間なんて、永遠におとずれないのではないか」

泣きはらした目で、枯れ果てた喉の痛みをもって。肩をがくんと落として。

1年間の厳しい訓練。
発声練習をすることによって、大きい声やはっきりした発音は手に入れられたでしょう。
ランニング・筋トレ・柔軟によって、ある程度の持久性やしなやかさも手に入れられたでしょう。
エチュード稽古で世間の見方も変わったでしょう。
でもそんな1年を過ごした中で彼らは絶望したのではないでしょうか。

「で、なにが『よきようになった』というのだろうか」

大きい声を出せること、はっきりした発音をすること、持久性をもつこと、しなやかに動くこと、物の見方の角度が変わったこと、これは、スタートラインです。
マイナスからゼロになったというだけのことです。それを身にしみたのではないでしょうか。
すべてはここからなのです。
すべては、この修了公演を経て、はじまるのです。

これを経たら、きっと、なにかがよきようになります。
だから、ここ、一踏ん張り。がんばれ!
喧々囂々・大修羅場の稽古場を横目に、心の中で応援しつつ、わたしも稽古の毎日です。
よき日が永遠に訪れない、は、これからも続く。
あう〜、なんという矛盾……。

演劇を嘗められなくなってしまった8人の記念日に、ぜひご期待ください。

鹿沼玲奈

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2016年度研修プログラム修了公演「Anniversary」
日程:2017年3月23日(木)~26日
会場:シアターノルン
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2017年度研修プログラム「俳優になるための年間ワークショップ」
オーディション開催中
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■年間ワークショップ参加者体験談
■年間ワークショップカリキュラム

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