稽古場日誌

Anniversary 髙坂 祥平 2017/03/19

おとこのきねんび

恥ずかしいからあまり進んで話したくはない。
私の学生時代の話。
高校、専門学校に通っていた頃なので、まあ年齢で言えば16~22歳だろうか。

突然だが、男にとって、異性の家に行く、もしくは、異性が家に来る、というのは何だかとても特別に感じられるものだ。

彼女が家に来る。

学生時代の私は、考えただけでそれはもうソワソワしてしまっていた。

高校で、当時付き合っていた彼女が初めて家に来るという話になった。
ソワソワしていた。緊張もしていた。
親が仕事でいない時間を狙って、彼女を家に呼んだ。
家に呼んでから15分後ぐらいに、ピンポーンと家のチャイムが鳴った。

焦った。

親にバレたらいけないと思った。

おそるおそる覗き込むと、妹だった。
今日に限って何で帰りが早いんだよっ!  と思ったが、妹に事情を話すのも馬鹿みたいなので、自分の部屋に戻って、財布からお札を取り出し、渡した。

「お小遣いあげるから遊んで来なさい」

今思えば邪魔されたくない気持ちで一杯だったなぁと笑える。
何であんなに必死だったのだろう。

専門学校に通っていた時も。
当時、気になっていた女の子が理由は忘れたけど、私の家に遊びに来るという話になった。
その日を指折り数えて楽しみにしていた。
当日、部屋の掃除を徹底し、何だかバカみたいにテンションが高かった。

結局、彼女は来なかった。
ドタキャンされた。

期待していた分、すかされた時のエネルギーといったら凄まじいものだった。
反動で、あの時は家で発狂した。
腹が立った私は、彼女の連絡先を消した。

思い返すとバカだなぁと思うし、話すのも恥ずかしい。
しかし、あの昂揚感、一人で舞い上がっていた当時のあの感覚は、普段はあまり感じることの出来ない特別なものではあった。

先週ちょっとだけ、研修生の稽古を見学した。
見学者がいるとまあ少しはカッコつけたいだとか、自分のエネルギーを見せつけたいと思うのが常。
今回も見学していてそれを感じた。こいつらエネルギーを持て余してるなぁと。
今にも爆発しそうな感じで、それはまあ見せつけたいとかそういう低いレベルでの欲求ではないかもしれないが。

稽古していたシーンで、たまたま出番が少なかった研修生が、休憩中に暴発していた。
銃で言えば、あれは間違いなく暴発。発射じゃない。発散し損ねたエネルギーが居場所も無くバンッ!  と誤射されてしまったかのようだった。

「あーあ、良い意味で舞い上がってんなぁ。不安だとか、とにかく色んなもん溜め込み始めてるんだな」

自分の稚拙なお話と一緒にしてしまうのは本当に恐縮だが、私は、公演当日、彼らが徹底的に準備したであろう、彼らの家に遊びに行くのが楽しみ。
昂揚し、ソワソワもしながら、必死に私たちを楽しませようとあの手この手で死力を尽くしてくれるはずだから。

髙坂祥平

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2016年度研修プログラム修了公演「Anniversary」
日程:2017年3月23日(木)~26日
会場:シアターノルン
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オーディション開催中
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