稽古場日誌

テンペスト(2018年) 武藤 知佳 2018/04/03

幸せの瞬間

「力むな!」
「身体に張りがない!」

「何がしたいのか伝わってこない!」
「頑張ってやっていることしか伝わってこない!」

「相手を入れて、相手を感じて!」
「相手の奴隷になるな!」

「目だけで見るな!」
「遠い目になるな!」

うぉー、もうわからない!!

『テンペスト』の稽古が大詰めを迎えつつあります。
私は山の手事情社の劇団員になって3年目が終わろうとしていますが、演劇の奥深さに呑み込まれっぱなしの毎日です。
ただ以前より、演劇の力を信じられるようになった気がします。

稽古場で“相手と気を合わせて歩く”という、いうなれば、ただ相手と歩くだけの稽古を何度も何度も繰り返すのですが、なかなかうまくいきません。
先輩や仲間に何度も何度も何度も稽古に付き合ってもらう中で、自分が風を切って歩いているような感覚になったことがありました。
ほんの一瞬の出来事でしたが、身体がぞわっとしたことを覚えています。
「今のはよかった!」
先輩からの声が聞こえました。
いつもとかわらない、窓を閉め切って、熱気が立ち込めている稽古場なのに、なんだかとてもすっきりした、幸福な気分になりました。
こんな瞬間を積み重ねていくことができたら、とてもとても幸せだろうと思いました。

『テンペスト』の舞台で、ほんの一瞬かもしれないけれど、「幸せの瞬間」を表現することができるよう、本番まで、試行錯誤し続けていきたいと思います。

武藤知佳

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劇団山の手事情社ヨーロッパツアー壮行公演『テンペスト』
(下丸子×演劇ぷろじぇくと2018特別企画)
日程=2018年4月12日(木)~13日(金)
会場=大田区民プラザ 大ホール
詳細はこちらをご覧ください。

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