稽古場日誌
こんにちは。大久保です。
先日、約2ヶ月に渡る3回のワークショップを終えました。題して「フィジカル・ワークショー」。金世一(キム セイル)さん主宰の劇団「世 aml」が呼んでくださいました。
世 amlは、セイルズアカデミーとして、セイル流・舞台俳優の為のトレーニングを積んでいます。集まった方々の多くはそのトレーニングを通過した俳優さんやダンサーさんだったので、少しマニアックなメニューに挑戦しました。
前半は一緒に走ったり暴れたり。少し息が上がるくらいの状態でのコミュニケーションは、自然とお互いの垣根を取っ払えます。
適度に動物的になったところで、相手の体を触ってもらいます。
昨今では、自分以外の大人の体を触ることが滅多になくなりました。ハラスメントになるんですか? でも自分の体を知るのに手っ取り早いのは、他人の体を触ることだと私は思います。だって、同じパーツなのですよ! 骨が一つ多いとか、筋肉が一箇所無い、なんてことは滅多にありません。雄雌の違い以外では、皆同じパーツを持っているのです。
とはいえ、そのパーツの大きさや内容は大変な違いです。それはそのまま個性です。相手を触ることで、自分の体との差異も浮き彫りになります。そこから、自分の体ってなんて〇〇なんだろう! という発見があるのです。
私は若い頃、自分の肩甲骨がなんて小さいんだろう! とビックリし、それがコンプレックスでした。肩がしっかりしていないから舞台上でも小さく見えるんだ……、と。今はこの小さな肩甲骨が「私」だと思えます。愛おしいです。
そういった対話をしながら、自分の体で意識できていない所はどこか? を探っていきます。
なかなか地味な作業なので、普通はこの辺で飽きてしまうのですが、さすがセイルズアカデミー。無言! 黙々と体と対話している! 私がビックリしてしまう程、集中していました。
集中の後は楽しいメニューです。山の手事情社流の《歩行》を体験してもらった後、オリジナルの歩行を作ってもらったり。それを構成してワンシーンにしたり。
エチュードでは「日頃のうっぷん」を語ってもらいました。出てくる出てくるうっぷんが! さらにそれを発展させて、ショート・シーンを作ってもらいました。
ちょっと信じられない程のモンスター・キャラが、ついに上司を異動に追い込むという実話をシーン化したのですが、怖かった……。
ショート・シーンの醍醐味のひとつだと思うのですが、頭で考えたら中々出てこない不条理さというか、折り合いのつかなさが実話にはあるのです。
モンスターと分かっているのに、罠だと分かっているのに、なぜ?! ということが実際起こる。この説明のつかなさが人間のおもしろさだし、演劇はそれを表現できるからおもしろい。もちろん、優れた戯曲にはその不条理さが折り込み済みで、それが「難解だ」とか言われたりするのでしょうけれど、不条理は人間の常態だよな、と思います。
そんなことを考えさせられる濃~い3日間でした。ヘトヘトになりましたが、爽快でした。参加者のみなさん、ありがとうございました。また遊びましょう!
大久保美智子