稽古場日誌
テンペスト(2018年) 小笠原くみこ 2018/05/31
今回2都市目に訪れたルーマニアという国は、今から約30年前までチャウシェスク大統領が独裁政権で統治していた国です。ということは民主主義国家になって、たったの30年弱しか経っておらず、まだ”混沌”としています。
“混沌”としている雰囲気は、約10年前に初めてルーマニアを訪れたとき所々に感じ、同時に日本はあまりに整備され便利すぎる国だなあ、という矛盾も感じたのでした。
ルーマニアは、”混沌”としているところがある意味魅力であり、それが演劇を盛んにさせている大きな理由の1つでもあるのです。
今回、5年ぶりに訪れたルーマニア。クライオーヴァという都市は初めて訪れたので、もしかしたら、これまで訪れた街と違うかもしれないという前置きはあるものの、ずいぶんと外国資本の店が多くなっている印象がありました。
例えば、ケンタッキー、H&M、スターバックス、オアシスという名前の巨大ショッピングモールもありました。私たちが勝手に「イオン」と呼んでいたH&Mやスターバックスが入っているデパートのような建物は、以前は昔ながらの古いデパートで、2年前にその建物ごと取り壊し「イオン」に新しく生まれ変わったそうです。
こうしたお店を、やっぱり便利なのでちょっとは利用してしまうけれど、なんだか淋しいと感じるのです。ルーマニアに暮らしている人々から見れば待ち望んだお店かもしれないですが、こういう発展を続けていけば、今のような演劇ラブの風土が薄くなっていくのではないかと心配です。
一方で、物が豊富でなんでも手に入る日本では、ルーマニアとは違う意味での演劇の役割があるのかもしれない、とも思います。きっと私の中ではまだ漠然としている、ということなんだと思います。今後の大きな課題です。
小笠原くみこ
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『テンペスト』ヨーロッパツアー報告会
■日時:2018年8月5日(日)15時~
■会場:大田区民プラザ 展示室
■料金:無料
■予約・問合せ:6月18日(月)予約開始
劇団山の手事情社
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