稽古場日誌

テンペスト(2018年) 浦 弘毅 2018/06/14

未来予想図

 

この度のルクセンブルク・ルーマニア公演、ご支援いただき誠にありがとうございました。
大きな事故もなく、大拍手のカーテンコールの中、終えることができました。

ルクセンブルクもルーマニアも劇場のスタッフがとても温かく勤勉で、日本人も見習わなくてはいけないことがたくさんありました。
ルクセンブルクでは舞台装置を作るため木工工場に足を運びました。機材などかなり最新のものがあり、美術製作の技術が高いことが想像できまし た。
最新の機器がそろっている工場の隣は、文化遺産的な80年前の鉄工所の跡地があり、歴史も感じられるとても素晴らしい場所でした。

ルクセンブルクもルーマニアも劇場のスタッフがとても温かく勤勉で、日本人も見習わなくてはいけないことがたくさんありました。
ルクセンブルクでは舞台装置を作るため木工工場に足を運びました。機材などかなり最新のものがあり、美術製作の技術が高いことが想像できまし た。
最新の機器がそろっている工場の隣は、文化遺産的な80年前の鉄工所の跡地があり、歴史も感じられるとても素晴らしい場所でした。

今回の海外公演を経て、山の手事情社が10年後、20年後、演劇というジャンルでどのように社会貢献ができるか考えさせられました。

私は演劇という、人間の歴史を扱った芸術によって助けられてきました。
自分が思い悩んで苦しい時に演劇を観ると「人間ってみんなそういうことを経験してきているんだ。自分だけが悩んでいるのではないんだ。」なんてよく勇気をもらいます。
20年以上演劇に携わって、この体験は、人間力を育てていくうえでとても有効なものだと実感しています。だから演劇は今の社会にこそ必要なんだと。
それは、人によっては音楽であったり、絵画であったりするかもしれません。

主宰の安田は大田区民プラザ大ホールの壮行公演の開演前のご挨拶で、「貧乏興行」と言いました。おそらく金銭的な余裕のある海外公演ではなかったと劇団員の私にも想像できます。
日本における興行についても同様です。劇団も俳優も身を削って演劇に取り組んでいます。

なぜそこまでして海外、日本で公演をしていかなければならないのか。
なぜこんなに窮困してまで演劇という芸術を続けなければならないのか。
沢山の方が疑問を持たれるかもしれません。

経済的余裕が一つの幸福であることもわかります。
しかし、私は幸福を支えるものは人との関わり、繋がりだと思っています。
もし今の世の中が経済だけを優先させる社会であったなら、やがて破綻してしまうでしょう。
野山に放たれたヤギに例えるなら、その場の食欲のために草を食み、やがては食い尽くしハゲ山にしてしまう様なものです。人間にとって今を生きるということは、目先の利益だけでなく長い未来を見据えての行動、育みが必要なのではないかと思うのです。

演劇とはとても時間のかかる芸術です。すぐに答えの出るものではありません。むしろ答えを出す作業ではなく、迷いながら想像し、時間をかけて創造していく作業です。
演劇は何に役に立つのか明確に数値化できるものではありません。
私たち自身、日々窮屈な時間の中で生きていると、どうしても数値化された根拠や金銭的な価値に頼りたくなることが多々あります。
ですが、本当にそういった指標に幸福をゆだねてしまっていいのでしょうか。

今の世の中で生きていくことは、そういったわかりやすい幸福を求めるものかもしれません。
ですが、人間なんて曖昧な生き物なのですから、わかりにくくていいのではないですか。
白黒つけない世界があるということを心の何処かにおいてみませんか。

とめどなく意見を書き連ねました。
演劇はご愛顧頂いているみなさまの応援なしには成り立たない芸術です。
日ごろからのご支援、感謝しております。
私たちとみなさまとで、演劇にどんな可能性があるのか一緒に考えていきませんか。

8月5日に海外公演の報告会を実施いたします。
ご参加を心よりお待ちしております。

浦 弘毅

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『テンペスト』ヨーロッパツアー報告会
■日時:2018年8月5日(日)15時~
■会場:大田区民プラザ 展示室
■料金:無料
■予約・問合せ:6月18日(月)予約開始
劇団山の手事情社
予約フォーム
TEL:03-6410-9056
MAIL:info@yamanote-j.org

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