稽古場日誌

テンペスト(2018年) 安部 みはる 2018/06/18

海外ツアーの要るもの、要らないもの

今回のヨーロッパツアーで私が気にしていたことは衣裳としゃぼん玉です。
衣裳については多くの説明はいらないでしょう。
衣裳プランナーの綾さんが作ってくださった衣裳の管理が主な仕事です。
全員の衣裳をリストアップし、洗濯方法も書いて各俳優に渡す。
「ひとつでも飛行機に積み忘れてみろ、ひどいめにあわすぞ~」と後輩に脅しをかける。
アイロンや裁縫道具、ファブリーズなど必要なものをまとめて飛行機に乗せる。
使いそうな単語「アイロン」「ハンガー」「扇風機」等のフランス語とルーマニア語をメモっておく。
渡航先では、劇場のスタッフさんに上記の単語を連呼して貸してもらい、いつも通りに準備を進める。破損を直す。
と、こんな感じです。
ただ、何がルクセンブルクやルーマニアにあって何を日本からもっていかねばならないのかの判断、これが悩みどころです。

衣裳関連の道具については海外公演の経験があるためなんとなく想像がつきます。
何を持っていくのか非常に迷走したのが、上述のしゃぼん玉についてです。
しゃぼん玉とは、『テンペスト』劇中で飛ばしている小道具です。
具体的にはしゃぼん液やわっかにしたひも、ひもをくっつける棒、液を入れるバケツなどが必要です。
しゃぼん液は食器洗剤や洗濯糊、グリセリンを調合して作るのですが、問題は水です。
日本は軟水なので水道水を沸かしてカルキを飛ばせば使えます。
ヨーロッパは硬水、渡航先のルクセンブルクやルーマニアはかなり硬度が高い水のため水道水は使えないのです。
実験①水道水を硬水化してやってみる(水+にがり)→しゃぼん玉がすぐ割れる。
実験②硬水のミネラルウォーターでやってみる→しゃぼん玉がすぐ割れる。
実験③硬水のミネラルウォーターを軟水化(洗濯ソーダを入れる)してやってみる→いい感じ。
実験④しゃぼん液に浸すひもを試す→フリース素材が一番いい。
調査①玲奈のドイツに住むいとこにスーパーに売っている水事情を聞いておく。日本から軟水を持っていく⁇

結論→水は軟水を渡航先で買う! 軟水がなかったら洗濯ソーダを使う! よし。
こんな風に実験を繰り返し、あらゆる可能性を考えて試し、いざ出発。
何のことはない、ヨーロッパは日本より水の種類が多く、近くのスーパーマーケットで軟水がすぐに手に入りました。
行ってみるとそんなに心配することなかった、要ると思っていたけど要らなかった。そういうことは多々あります。
でも演劇は一瞬で終わってしまう芸術なので、あらゆる事態を想定した事前準備が必要なのです。

ちなみに、しゃぼん玉を飛ばすために必要な小型扇風機、ルクセンブルクでは劇場さんが事前に準備してくださったのですが、ルーマニアにはなかったのです。
舞台仕込みの日がちょうど日曜日で小売店はだいたいお休み。ボランティアのボクダンに同行してもらい、「オーシャン」という巨大スーパーを探し回ってようやく許容範囲のものを見つけました。これは少々大変でした。
気候は真夏のように暑いのに、ルーマニアはまだ夏シーズンに突入しておらず、夏グッズはまだ出していないそうです。

反省としては、私物を持って行き過ぎたことでしょうか。
自分の荷物は最低限必要なものを持っていくことをオススメします。

壮行公演を含め2か月の準備・稽古期間を考えると、ツアーは本当にあっという間に終わりました。
帰国してしばらくは抜け殻状態……。
そろそろ気合を入れなおし、次の作品に取り掛かります。

安部みはる

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『テンペスト』ヨーロッパツアー報告会
■日時:2018年8月5日(日)15時~
■会場:大田区民プラザ 展示室
■料金:無料
■予約・問合せ:6月18日(月)予約開始
劇団山の手事情社
予約フォーム
TEL:03-6410-9056
MAIL:info@yamanote-j.org

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