稽古場日誌
テンペスト(2018年) 鯉渕 翼 2018/07/20
山の手事情社が海外に持っていく作品は、基本的にセットはシンプルで小道具なんて皆無。そもそも山の手事情社の芝居は身体で道具も表現するので小道具自体がほぼないのです。
ところが今回の『テンペスト』は、近年の作品の中で最も小道具を使う作品で、役者が手に持って使う本だけでも大小様々50冊以上、舞台美術の本も含めると160冊以上になります。その他モップ、コップ等々。
そして今ツアーでの私の役職は小道具班。これは嵐の予感がしました。
中でも印象に残っているのはやっぱり本たち。数が多いことも大変でしたが、最大の欠点はとにかく脆い事です。
必要なページだけが開くように仕掛けを施し、絵や文字の印刷された紙を張り付け古ぼけた本に見えるようコーヒーで染色して、できるだけ丈夫に製作するのですが、本は本。舞台の蛮用には耐えられないのです。
投げられて仕掛けが弾け飛ぶ本。手汗や噛みつきで削り取られる絵や文字。付着する様々な汚れ、ついに耐えられず真っぷたつに裂ける等々。
「痛い!」
「踏まないで!」
「止めてくれ!」
本たちの声が聞こえるようでした。
小道具ですから使い込んでもらってなんぼですが、稽古1回でボロボロに傷ついていく姿はいたたまれず、修理を重ねるごとに妙な愛着がわいていくほどでした。
本番後、あっさり処分することになった本たち。帰りの荷物の軽くなりように驚きました。
せっかくなら自分の本くらいもって帰ってもよかったかな、と後になって少し思ってみるのでした。
鯉渕 翼
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『テンペスト』ヨーロッパツアー報告会
■日時:2018年8月5日(日)15時~
■会場:大田区民プラザ 展示室
■料金:無料
■予約・問合せ
劇団山の手事情社
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TEL:03-6410-9056
MAIL:info@yamanote-j.org