稽古場日誌
6月25日から約1週間、岡山県の井原市、矢掛町へ小学生を対象としたワークショップに行ってまいりました。
まず、岡山県広島県を始め、中四国・九州地方の豪雨による被災者の皆様、心よりお見舞い申し上げます。
つい先日お邪魔したばかりの地域ということもあり、皆さんの安否やお宅の状況が非常に気にかかります。
お手伝いできることがあればいいのですが……。
さて、先日の岡山県でのワークショップの様子をご報告させていただきます 。
お邪魔したのは井原市と矢掛町の小学校、合計8校、約630名の生徒さんに《山の手メソッド》を鑑賞していただき、ちょっとだけ体験もしていただきました。
岡山に到着したのは6月25日の夕方、拠点として1週間お世話になったのは、井原駅から徒歩5分ほどのところにある「神楽宿ゲストハウスまつり」という施設です。
2階に宿泊施設があり、1階にはなんと、名前の通り神楽を舞うための本格的な舞台があるのです。到着した当日、ゲストハウスのオーナーさんやワークショップコーディネーターさんのご厚意で、本格的な備中神楽を拝見しました。地元に根付いた芸能は本当に見ごたえがありました。
翌日からはいよいよワークショップ本番。
まず、全員参加のウォーミングアップ。座ったままただ見ているだけでは退屈です。背中をたたき合ったり、指先や身体を左右上下ずらした運動で心と身体をほぐします。
安田の「できた人、手を挙げて!」 という問いかけに元気に手が挙がります。
少しほぐれてきたところで、俳優によるデモンストレーションを見ていただきます。
最初は《歩行》。
スローモーションで歩き出すと、どの学校でも「おお~!」 というどよめきが起こります。
スローモーション、という言葉はみんな知っているようで、「スローモーションだ」「すげー」「ばっちり揃ってるぞ」ざわざわ……、といつもの舞台公演とは全く違う雰囲気に飲み込まれます。
くっ、負けるものか! と、こちらも最大限の集中力で歩きます。
変な歩き方、なんていうのもやってみました。
「怒っているけど、だらしない歩き方」「悲しいけど、元気な歩き方」「怒っているけど、うれしい歩き方」など、安田から出されたお題に沿って、まずは私たちがやってみます。
子どもたちに大いにうけます。
「やってみたい人!」と声をかけると大勢前に出てきて、恥ずかしがりながらも勇気を振り絞ってやってくれます。
子どもたちの方が面白い歩き方をしたときは、こちらとしてはジェラシーです。よりスゴイ歩き方で戦いを挑みます。
次はもう少し高度な身体を動かす練習。
安田が手をたたく瞬間に喜怒哀楽に沿ったポーズをとります。山の手事情社では《二拍子》と呼んでいる練習です。
私たちが一瞬のうちにポーズを作り、ピタッと止まるとまたもどよめきが起こります。
「怒り」のポーズを作り、スローモーションで客席に入っていくと、まるでモンスターでも見たように「きゃーー」という悲鳴とともにみんな体育館中逃げまどいます。中には私たちを退治しようとする勇敢な子もいます。私たちではない何か恐ろしいものが彼らには見えているのでしょう。ついついこちらも楽しくなり、どこまでも追いかけていきます。
その後《発声》でみんなで大きな声を出し、《メイクマシーン》という人間が機械のようにいろいろな物体を製造する稽古を見ていただきました。
最後に、俳優が身近な人の真似をする《ものまね》を見ていただいて今年の芸術鑑賞会は終了です。
6月とは言え、体育館は非常に暑く、90分という時間は子どもたちにとっても大変だったと思いますが、みんな本当にエネルギッシュに参加してくれました。
面白いときは大いに笑い、つまらないときは全く見てくれない。子どもだからと侮るなかれ。小さいだけで、感情豊かで率直な人たちです。こちらも90分間、一瞬たりとも気を抜かずに全力で挑まなければ、手を抜いたなとすぐにばれてしまいます。
どの学校でも、先生方が積極的に参加してくださり、それを見ると子供たちはさらに盛り上がります。いつもと違う先生の様子が新鮮に映るのでしょう。
鑑賞会終了後は、俳優たちが各教室に散らばって一緒に給食をいただきました。
スローモーションで給食を食べている子、私の《ものまね》の一部を早速披露してくれる子、どこが面白かったか、興奮状態で話してくれる子、楽しんでくれてよかったです。
また来年会えることを祈っています。
安部みはる