稽古場日誌

その他 小笠原くみこ 2019/03/29

ほうろうしながらも覚悟はありました

3年前。プロジェクト名も決まっていなかったこの企画。有料の公演をおこなうことを目的にやってみようと言い出したものの、今だから言えますが、できるかどうか不安しかなかったのが正直なところです。出演者は、普段は働いているメンバーで、それまでワークショップやワークショップの発表会に参加経験はありましたが、公演となると、全く違ってきます。私も含め自己満足で終わらないことを目標にしてみようと思いました。観ていただくお客様と同じ空間や時間を共有し、何かを届けなくてはいけません。その覚悟があるのだろうか……。

実際始まってみると、その覚悟があるからやる、ではなく、覚悟を固めていく作業が必要だということがすぐにわかりました。土日に稽古時間を確保する覚悟、時間を確保するために様々な根回しをする覚悟。稽古日以外の平日でも演劇のことを考えたり課題の練習をする覚悟。様々な課題と向き合い、さらけ出し、考察し、創作する覚悟。

徐々に創作に入ると、自己満足で終わらないためには、どうすればいいのかということに悩みました。その言葉の意味は理解してくれていましたが、じゃあ具体的にどういうことなのか? 私が考えたのは「コントロールすること」でした。自分の声や呼吸、体の動かし方、ニュアンスの出し方、相手役や空間との距離の取り方などなど、俳優自身が気持ち良いところではなく、役として適切なところはどこか、時には疑いを持ちながら進めて行きました。そうすると今度は、言われた通りにやることが一番大事になってしまい、舞台で生きていない、元気がない、という壁にぶつかりました。
この壁にぶつかったのは、本番2週間前。稽古日は残り5日。まだ創作上の修正も加えたいし、セリフもおぼつかないところもあり、焦ります。でもここが一つの勝負どころだと思い、こうなったら言葉だけで「元気を出して演技して」と変化を求めるより、私からできるだけ大きく動いたり、楽しそうに取り組む姿勢に変えていくようにしました。少しずつ少しずつメンバーも変化していったように思います。

プロの俳優ではない分、1つの、それも大事なことほど、浸透し腑に落ちるまでとても時間がかかります。追いついていないことは多々ありました。それでも、私含め、たくさんの発見と悦びがあり、覚悟は最後に追いついたのだな、と思ったのでした。ほうろう社プロジェクト。これから放浪するのか、留まって続けるのか今は未定です。もし、活動が再開したら、ご声援いただければ幸いです。

小笠原くみこ

稽古場日誌一覧へ