稽古場日誌
今年度劇団山の手事情社に入団いたしました、太田成美です。どうぞよろしくお願いいたします。
研修生のとき常々、本公演をサポートしながら感じていたことがあります。
手前味噌にはなりますが、劇団山の手事情社は、豊かな空間を保持していると思います。幅広い世代の役者、人を傷つけなければ何をしても良い稽古場の空気(面白ければなお良い)、35年かけて築き上げたメソッド(都度改良が加えられる)。
何より豊かだと思うのは、やはりその感情のエネルギーです。その場で出し得る最大出力が、劇中何度も何度も交わされます。
人間のそれほど必死な様は、日常生活では滅多にお目にかかれません。もし遭遇してもそっと目をそらします。見てはいけないものを見てしまった感覚に襲われるからです。
見てはいけないものって、見たくなりませんか。見せてしまう側だったら、恥ずかしくて隠したくなりませんか。
劇団山の手事情社は特に、そういうものを暴きにかかります。役者自らさらけ出して、或いは作品の力によって。
それこそが演劇なのだと思っています。
うまくいけば、ただただ圧倒されて見惚れてしまうような最高に美しい時間が流れるのではないかと思っています。
いつかそんな時間を生きたいと、願ってやみません。
淘汰されていく演劇の中で、ナニモノかになろうとしている、この劇団山の手事情社でそれができるのではないかと思いました。
まだまだ大言壮語ではございますが、いつかまことになるように精進して参ります。
よろしくお願いします。
太田成美